思いつくまま、気の向くまま
  文は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、若者たちの行く末を心配してます。





百聞は…


古い録音テープの整理をしていたら、「中年ご三家武道館コンサート」というのがでてきた。

1974年それぞれのジャンルで売れっ子だった小沢昭一、野坂昭如、永六輔の三人が東京

武道館で開いたコンサートの放送録音だ。

なつかしくなって整理の手を止めて聴いていると気になる言葉にであった。小沢昭一のステ

ージで、旧軍隊(そう彼は海兵78期生だったのだ)の話をしたあと、武道館に下がる日の

丸を見て「日の丸が下がっているのが気になる。また、日の丸をふらなきゃならない……い

やなんです」としずかに言った。


この時代、テレビ、ラジオ、芸能界の寵児であった小沢昭一、野坂昭如、永六輔、大橋巨泉

は、おかしな言い方だが正気のときはみな反戦主義者であった。先日訃報があった大橋巨泉

は週刊誌上で最後の最後までいまの世の中を憂いていた。

仕事の顔となぜこうもちがうのかと考えてみると敗戦時小沢は16歳、しかも海兵とはいえ

軍隊の理不尽を経験している。野坂15歳、永12歳、大橋11歳とみな戦争体験者なのだ。

いろいろな世論調査をみてみると60歳以下は安倍政治につよい反対の気持ちがないようだ。

むりもないことだが彼らには窮屈な時代、戦時下とはどのようなものかまったくわからない。

学校で戦争はいけない、平和は尊いと教えられても戦時下というものは想像できないだろう。

先にあげた4氏は戦争体験者である。だから心のそこから平和を叫ぶことができた。人間体

験ほど身に沁みることはない。「百聞は一見に如かず」というがこればかりは体験をすすめ

るわけにもいかず、これからの平和教育の難しさを考えてしまう。


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