●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんが見た世間の人々の諸事情(?)シリーズの12。



世間話シリーズ

誕生日ブルー


新聞を読んでいたら、「誕生日の自殺者1.5倍」という見出しの小さなコラムに目が

いった。

えっ、なんで! 誕生日といえば、自分がこの世に生まれ、生きるスタートを切っ

た記念すべき日。できれば今ある幸せをかみしめ、この日をさらに未来へとつなげ

たい、そんな希望をもてる日でありたいではないか。

その記事によると、厚生労働省の人口動態調査の分析で、特に欧米では記念日を期

待通りに過ごせず孤独感などの心的ストレスが増え、自殺が増加するそうだ。「誕

生日ブルー」という言葉もあるという。それが日本でも同じ傾向が見られるという

のだ。自殺の恐れがある人の誕生日が近づいたら、周囲が一層注意、サポートする

必要があると、警告をしていた。

私は、さもありなんと思った。

誕生日は特別な日、良きにつけ悪きにつけ今ある自分を意識する日。何か行動を起

こすには格好の日である。

そして、あることに思い当たる。

高度成長期時代あたりからだろうか、お誕生会と称してこどもが幼稚園時代、こど

もの友達を呼びパーティを開き、あのHappy Birthday to you! を歌って祝う

のが流行した。私も子育てのときはめんどくさいなあ、思いつつも催したものだ。

それが、年々派手になり最近ではケーキやお菓子はもちろん、部屋の飾りつけ、ゲ

ームを考え、おみやげまで持たせる大イベントになっているらしい。

スマホの普及もあって広く浅い人間関係を保ち、何事も友達第一の風潮の中で育っ

た若者は孤独に弱い。

大人になっても誰からも祝福されない誕生日はこの世から見捨てられた気分になる

のかもしれない。

ところで6月20日は私の誕生日。この歳になると、祝おうというよりも、わっ、

やだ! また歳をとっちゃった…という気持ちが強い。ある種の「誕生日ブルー」

かもしれない。


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