まさかまさかの礼服さわぎ
「オメデタイことで礼服を着るのは最後だろうね〜」と言ってから20年。
「これからはお葬式だけよね」といって6年すぎた。
飲み仲間のバミちゃんから「結婚します。ぜひ出席してください」とのメールが
はいった。
バミちゃんは名のとおりウワバミも恐れをなすほどの大酒飲みである。小柄でカ
ワイイ顔をしながらどこに酒が入ってしまうのかとおもうほどよく飲む。また、
大人のなかにはいっても礼節をわきまえているので重宝して飲み歩いた。
「わたし30までに結婚します」と聞かされながら去年で6年。なんと言ってひ
やかそうと思っていたところへのメールである。ちょうど出かける予定とかさな
ったので一度は欠席の返事をしたのだが、老妻がぜひ祝ってやろうよというので
急きょ出席することになった。
さて、あわてたのはこちらである。式場は京王プラザホテルなのでハンパなかっ
こうではまずい。
むかしの体形であつらえた礼服である。あれから体形もかわっているので着られ
なかったらえらい散財になる、といそいでとりだして着てみたらまだ大丈夫。つ
ぎはワイシャツだ。フォーマルなワイシャツとも縁がきれて何年になるか。こち
らのほうは1日もてばいいやと、安くて見栄えのよいものを買ってきた。ネクタ
イは保存がいいので心配ない。靴は10年くらいまえに買ったものが新品状態で
ある。履いてみたらこれもだいじょうぶ。長く歩けるか心配だがビッコをひいて
もおかしくない歳なのでよしとする。
なんやかんやで、大さわぎの2週間。おかみさんのほうは晴れの席でフォーマル
な着物が着られるというので照れながらも大張りきり。
さわいだかいあって、いまどきの若者の結婚式を楽しんだ。料理も美味いし、バ
ミちゃんの代りになる新潟美人の呑兵衛ともお近づきになれた。もつべきは若い
友人である。 |