3/22のねこさん       文は田島薫



中腹の家のねこさん


先週の金曜日の午後、諏訪湖のそばの丘陵に沿って民家が立つ道を家人と私が螺旋状に

下ってきた時、途中の簡素な家のさびついた小さなベランダに薄汚れた茶色い小柄なね

こさんが座ってるのと目が合った。よ、って手あげてるわれわれをねこさん、じっと見

てるんだけど、表情が固まってる。やがて、右手にある玄関ドア前の小さな石段のわき

から別の同じような似たねこさんが歩いて来て、ベランダ手前で立ち止まりわれわれに

気づき、座ってこっちを見てるんだけど、こっちの方は少し外交的な表情のまま、やっ

ぱり固まってる模様。その後、今度はその家の主人らしい若い男女が水のようなものが

入ったポリタンク持って帰って来て、われわれとなんとなく目を合わせたようなそうで

もない感じでちょっとねこさんたちになにか意味のない声かけしてドアに入った。


けっこー腹へったけど、も〜ちょっと暗くなるまで待ってると、おばさんがごはんくれ

っからそれまでのがまんだね、あんまり動くと余計腹へっからじっとしといた方がい〜

んだよな、でも、たまにこ〜してると、なんかうんまいもんくれる人がいるから、そ〜

すっと、ラッキー、って感じでいただいちゃうんだよな、そーこーしてるうちにうわさ

の人たちが来たか〜?ん?さて?さ〜、なんかくれるか、どだ、まだか、もーちょっと

すっと、肩にかけてるかばんからなんか出して、ほら食べる?って、とか、まだかな?

ん〜ん、ただ笑ってるだけだね〜、なにもおかしくないぞー、お、きょうだいが帰って

来てなんだか喜んでるよーだけど、だめだめ、こんにゃろたちはなんにもくれへんで。


戻る