2/29のねこさん       文は田島薫



はんた〜


先週末の晴れた遅い朝、狭いベランダの階段にねこさんが日なたぼっこしてるよ、って

家人が小声で教えて静かに見に行くように言った。そっと行って階段の下をのぞき込む

と登り口のコンクリの上で白に黒のぶちのねこさんが寝そべってくつろいでる。これだ

と四畳半の部屋の窓からのがよく見えるはずと、そっちへ行き全身を上から確認。家人

にその見方を教えると、見に行ってから、いない、あれ?あ、あ、あっち歩いて行く、

って、道路の方へ出て行ったらしいんで、またベランダに戻って見下ろして見たら、も

うねこさんの姿がないんで、ひょっとして、って端へ行って奥の家のアプローチをのぞ

いてみると、手前のフェンスに沿ってねこさんが奥へ歩いて行くのが見えた。見てると、

奥の家の門のとこまで行ってからなんだか身を低くして庭の左端の方を見てたかと思う

とさっと走って行って植え込みに入ったとたん、小鳥のぴーぴーぴー、って叫び声が続

いた、お、鳥が襲われたか、って思ってると、間もなくぴーぴーぴーが遠ざかってって、

口になにもくわえてないねこさんが出て来た。


いやいやのんびりしたね〜、日なたぼっこしてたらなんだか少し飽きてきちゃったから、

どれ、少し歩いてみっかな、そだ、あっちの方行ってみっか、お〜、歩きい〜道だけど、

ぼくはあっちの奥の木があるとこへ行きたいんだよね、うん、お、なんだか、エモノが、

いるぞ、あっちに、こ〜やって、あっちのスキを待って、今だ、さささー、かぷっ、っ

て、ちょっとおっぽんとこくわえてみたんだけど、ん〜ん、考えてみっとぼくはさっき

ごはんもらって食ったし、これを食う気分じゃないな〜、なんだか、ぼそぼそしてて舌

ざわりもあんましよさそ〜じゃないし、お〜、きもちわり〜、ぺっぺっ、あ〜あ、なん

でぼくはあんなもんくわえちゃったのかな〜、鳥さん、わりかったね〜。


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