●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、鍋見ながら一年をふりかえります。



鍋日和


冬本番、いよいよ鍋の季節がやってきた。

秋に高かった野菜の値段もようやく落ち着いて一安心。

鍋はおいしいし、手軽だし、栄養バランスもいいし、温まるし、くつろぐし、後の洗

い物も少ないし、といいことづくめで主婦大歓迎の手抜き(?)料理だ。

我が家は呑兵衛だった夫が病気以来すっかり酒をやめてしまったので食事時間が短く

なった。

そこで、私は台所で土鍋に材料をすべていれて仕上げてから食卓に出す。従って材料

の入れる順序でもめることもなく、仕切る鍋奉行もアクとりの悪代官もいない。ちょ

っと寂しいけれどおいしさに変わりはない。


早いもので今年も終わろうとしている。

胸に去来するものは・・・

「公」である世界情勢も、「私」である自分の状況も大きく変わったこと。

どちらもあまりに変化が大きくて呆然とするばかりだ。

「公の」方は自分の力ではどうにもならないが、「私」の方はいろいろ心がけねばな

らない。

今まで介護らしいことは何もなかったし、夫もなんとかここまで乗り切ってけれど、

先のことはまったく予測がつかない。

どうしても今より良くなることはないと悲観的に思ってしまい、そのときの対処方法

は? と考えるとこころもとないけれど、いままでのつちかった知恵という素材をフ

ルに生かすかしかないのだろう

「公」も「私」もさまざまな具の個性が微妙に影響し合い絡み合って混然一体となっ

て、うまさを出さなければならない。

尖らず、やさしく、ほっこりと・・・まるで鍋料理のように・・・


(今年の“一葉もどき”はこれより冬休みに入ります。1年間お読みくださりありがとうございました。
皆様良いお年をお迎えください)

12/27 無記名さんからコメントありました。
心強いメッセージです/年を重ねるうれしーい、おくりものですよね。


戻る