思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせー、世慣れててもさすがに初めての場所は緊張のようです。




真夏の夜の夢




夏休みもおわりに… 夏休みなんて関係のないご身分ですが、世間並みにそわそわし

てくるのです。

錦糸町の「河内音頭盆踊り」にいってきた。30年以上つづく東京名物のひとつなの

だが行くのははじめてだ。

なぜ東京で河内音頭、なんてやぼなことを考えていたが、始まって見てそのおもしろ

さがわかった。

いちおう踊りの形は決まっているが、こまかなところは踊る人がかってにふりつける。

見ていると舞台で歌われる大音響の河内音頭にあわせて、正調で踊る人、跳んだり跳

ねたり回ったり、まるでサンバかジルバのように踊る人がいる。その熱気と迫力は東

京ではめずらしい、さすが大坂発祥のものはちがうと感心してしまった。


踊るあほうに見るあほう…

踊っている人の楽しさにくらべたら見ている楽しさは百分の一くらいだろう。

見るあほうも立ったままでは疲れるので、すぐわきの屋台にとびこんで河内音頭をさ

かなにビールを飲んだ。ななめ前にいるおじさんもごきげんで飲んでいる。真向いの

席に青年が入ってきて、座るときにテーブルをけとばしてしまいおじさんのビールが

こぼれたのでえらい剣幕でどなりだした。しばらくみていたがおさまりそうもないの

で割って入った。喧嘩がおさまるとおじさんに「あんた慣れてるね」とからみつかれ

た。こんどはこっちの番かとそうそうにひきあげることにしたら、テーブルにおいた

カメラも足元のバックもなくなっている。まわりの雰囲気に酔って注意力がなくなっ

ていたのだ。おまつり屋としては恥ずべき事態だ。


乗ってきた自転車置き場のほうに歩きながら、しかたがないカメラは買えばいいんだ

し、バックの中の財布はさっきの支払いをすませたら千円しか入っていない。浮かれ

たバチだ、とあきらめようとしたとたんに気がついた。財布の中にはカードもある、

保険証も入っている早く家に帰って手続きをしなければと酔いもふきとんでしまった。

自転車置き場につくと停めた時と景色が一変していてどこに止めたかわからない。あ

おくなって小一時間も探し回っていて気がついた。歩いて帰っても2〜30分じゃな

いか、なぜはやく気がつかなかったんだろうと後悔の念がわいてきたところで目が覚

めた。

時間は夜中の2時。なんだ、夢だったのか… と安心したけど夢の中のドジが気にな

ってしばらくのあいだ寝られなかった。


すこし早めについた会場は、ビルの谷間にある高速道路の下の広場。広場というより

空き地と言った方がふさわしい。ふつう盆踊りというと櫓が組まれそのまわりで踊る

のだが、ここは舞台がつくられていてその前がひろく空いているだけ。


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