思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
センセー夫婦、きょうのヴェネツィアは余裕で楽しみました。



ボンジョルノ・イタリア(10)ヴェネツィアその2




10月7日。6時に目覚ましが鳴る。いささかくたびれたので45分ころ起きて、洗面と今日の午後ミラ

ノに向かうので荷造りをすませる。

朝食でKさんと同席になった。きのうの時計台の混みぐあいや夜のリアルト橋の様子を聞かれる。添乗さ

んは忙しいので案内以外では思ったほど名所に行ってない。迷って心配をかけたお返しになるべくくわし

く話をした。次回の参考になるという。部屋にもどって荷物を廊下に出して出かけることにした。

きょうは、2時の出発まで自由だ。サンマルコ広場に着くとマンホールから海水が湧き出している。上げ

潮だ。あちらこちらに高さ80センチくらいの渡り廊下が片づけられないで残っている。一昨日は、大潮

で水につかったと銀ちゃんが言っていたけど、おぼれる、は大げさにしても上げ潮にあたった観光客はた

いへんだったろう。

昨夜リアルト橋にいく途中でみつけた、サン・ズリアン教会に寄る。小ぶりな建物だが中に入ると古楽器

が陳列してある。室内楽の演奏会もあるらしく、この教会で演奏しているポスターと予定表が貼ってあっ

た。そこにいるお兄さんに、脳みそに残っているありったけの英語をならべたてていろいろ聞くと、この

メンバーの演奏会が今夜べつの場所である。ぜひ行ってくれといわれてパンフレットを渡された。

残念ながら今夜はもうここにはいないのでCDを買った。この教会のライブ盤でないのがおしい。展示し

てある古楽器のいわれも知りたいのだが、そこまでの語学力がなかった。

リアルト橋を渡ってガイド本で見つけた魚市場へ向かうことにした。市場やスーパーマーケットというと

ころは、そこの住人の生活が凝縮されているところでおもしろい。どこの国へ行ってもできるだけ行くこ

とにしている。これは国内旅行でも同じだ。


橋へ向かう街路は夜見るのと違う顔をみせている。はじめてのように新鮮だ。昨夜見つけたバック屋を避

けてちがう道でリアルト橋へ。橋は夜の三倍くらいの人出だ。その混雑のなかで韓国人カップルがモデル

のようなポーズをつけて写真を撮っている。スペイン広場でもおなじ光景をみたが不思議な人種である。

そのなかで本物の新郎新婦が記念写真を写していた。もちろん本物のカメラマンで。観光客はニコニコと

見ているか、遠回りをしていく。日本なら「じゃまだ」の一声くらいはかかるだろう。また、この場にあ

っても、われ関せずと新郎新婦の撮影のじゃまをしながら自分たちの撮影に夢中になっている韓国人とは、

ほんとうに不思議な人種である。

橋をわたり50mほど行くとリアルト魚市場だ。ここは海に面していて鮮魚、野菜、果物がいっぱいの市

場。地元のオバサンたちが店主とかけ合いで買い物をしている。日本も昔はこうだった。生ものは買えな

いので香辛料をいろいろ買った。量り売りなので日本の十分の一くらいの値段。市場を出て路地めぐりを

する。このあたりは店もあるが主に住宅街なので静かだ。人通りもすくなく、上を見ると窓から下がる洗

濯物と植木鉢が生活のにおいをさせている。

リアルト橋にもどる。昨夜下見をした運河沿いのレストランは昼時なのでどの店も混みはじめている。

やっとみつけた水際の席が空いている店に入る。運河をわたる風が気持いい。ムール貝、サラダ、ピザ、

ビールをたのむ。ピザを持ってきたウェイター君はあとから皿を二枚持ってきてテーブルにおきながら日

本語で「はんぶんこ」という。二人でピザを分けろと言う意味だ。食後のカプチーノを味わい、目の前を

行きかうゴンドラをながめながらしっかりとヴェネェチィアを目にやきつける。


一夜経つと人は変わるものである。お大師さまが昨夜あきらめたバックを買うと言いだした。店をさけて

もむだであった。道をもどってウィンドウ越しに品物をたしかめる。二人の所持金をたしても買える額で

はない。それをいうとカードで買う、とあっさりしたものだ。店に入り品物を手に取ってカード払いを聞

いたら「OK」という。ではJCBでというと「NO」。VISAはOKという。店の女の子が入力器の

ボタンをゆびさして「PIN,PIN」とくりかえす。国内では使ったことがないのでポカンとしていた

が暗証番号のことだ。お大師さまは暗証番号を覚えていないのであきらめようとしていたら、上司らしい

店員が来て機器を操作して買えることになった。しめたと思って、目をつけていた財布を相乗りした。財

布の分は帰国したらしっかり請求されたことは言うまでもない。


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