思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
センセー夫婦、絶景観ながら移動したりなんか買ったりレストラン入ったり。



ボンジョルノ・イタリア(5)ローマその3






ヴィツトリオ・エマヌエーレ2世記念堂が、フォロロマーノが、コロッセオが、目の前に現れては消え、

現れては消えてゆく。いずれも超がつく有名な観光地だ。

パンテオンから次の目的地サンタマリアマッジョーレ教会へ行くタクシーでの車中観光。歩けば3時間

のコースだが、信号待ち、渋滞のおかげで20分少々で見ることができた。コロッセオ以外は今回のコ

ースに入っていなかったのでもうけものだった。


サンタマリアマッジョーレ教会は、5世紀に創建されたものでその後いく多の改修を経て現在の形にな

った。巨大な聖堂はローマ4大聖堂に数えられ、サンピエトロ寺院が出来上がる前はローマ法王の主座

がおかれたほどの格式の高い寺院であって聖母マリアに捧げられたものである。

改修のおかげで聖堂内はいろいろな様式をとりまぜて造られているが、主体をなすローマバシリカ様式

の列柱の回廊はみごとだ。聖堂正面の壁と天井にあるビザンチン様式のモザイク壁画が今回のお目当て。

これは5世紀創建当時の壁画が改修のために壊されてしまったときの破片をもとに再構築したもので、

往時の様式にそって造られている。主座の地下には、壁、床、ともにみごとな大理石のモザイクでかざ

られた部屋があり、キリストが生まれた時の「まぶねのかけら」が聖遺物として祀られている。

「まぶね」とは飼馬桶のことで、キリストが生まれたときゆりかごがなかったのでかわりに使った飼馬

桶のかけらということである。銀でできた幼子キリスト像の下にはめこまれた木片は2000年前の物

と言われても…。しかし、このような聖遺物の真贋を疑うことをしてはならない。信心とはそういうも

のである。


サンタマリアマッジョーレ教会を出て次は買い物だ。地図で調べた目的のスーパーは教会の左斜め前方、

目と鼻の先にある。

またやってしまった。左へ行くところを右に行ってしまった。どうも脳内のジャイロコンパスが狂って

しまったようだ。まちがえたことはすぐにわかった。しかし、このまちがいで聖堂の裏側を見ることが

できた。巨大な聖堂は裏と表から見るのではまったく違う形をしている。どちらか片方からか写した写

真をみるとまるで別の建物に見える。

スーパーは地図のとおりの場所にあった。地下にある店はエスカレータでおりてゆく。入り口を入ると

ビックリするほど大きい。生鮮食品から雑貨まである店は地元の人でにぎわっている。ここで念願のビ

ール、値段の安さに目がくらんで大量のオレンジ、おみやげ用にチョコレート、自家用にオリーブの漬

物、焼き立てでおいしそうなパンをカートに入れると土地の人顔負けの量になった。持っているバック

に入りきれるかどうかと心配しながらレジに行くと、外国人と思ってか有料の手提げのついた紙袋をサ

ービスしてくれた。

重たい袋をぶらさげて、さきほど迷った広場にあるタクシー乗り場に向かった。

運転手に地図を見せて「このホテル」というと住所を教えろという。さてはボロホテルでわからないと

でもいうのかなと思ったが、見せた地図では外国人のわれわれにだってサンピエトロ寺院へ向かう大通

りぞいにあるホテルとわかるのだからそんなわけはない。あいにくホテルのカードを持ってこなかった。

「住所」「わからない」と押し問答をしていたら運転手は外にいた仲間を呼び寄せ地図を示しながらな

にやら話している。やがてOKとなって走り出した車の運転手の手もとを見ていたらカーナビに打ち込

んでいる。なるほど日本のタクシーより頭を使わないという意味では進んでいるのかな?


タクシーはバルベリーニ宮殿、骸骨寺を見て高台にあるボルゲーゼ公園の中腹をまわりながらスペイン

広場、ポポロ広場を見おろし、ローマ市中を遠望した。坂を下りた車はサンタマリア・ポポロ教会の前

の広場を曲がり双子教会の前に出た。われわれの予定に入っていないコースを巡るのは贅沢なドライブ

である。

ホテルに着いて食事の時間にははやいのでタバコ屋すなわちタバッキーを探しに出たが、こんども見つ

からない。日本から持ってきたタバコはあと2,3本。禁煙にはいいチャンスなのだがやはり心細い。

7時をまわったので食事にいくことにした。今日一日はすべて自前でやらなければならない。外は雨模

様になってきたので折り畳み傘を一本持って出た。ロビーで添乗員のKさんに会ったので、今朝教えて

もらったレストランとスーパーの場所を確認して歩き出した。

途中いろいろよさそうなレストランがあったが、今日は疲れているので日本語が通じるところにしよう

とKさんに教えられたホテルから3,4分のところにあるグロッタアズーラへ向かう。途中で散々探し

たタバッキーを見つけた。その場所は昨夜から歩き回ったところからあと一歩というところにあった。

旅に出たらその土地のタバコを吸うことにしているので、イタリアタバコをくれといったらMundialを

くれた。4.25ユーロ 円換算で570円やはりタバコは高い。ケントやマーボロだと800円位する。

わき道にあるレストランは直ぐにわかり、店の前の歩道に並べられた席についた。

アジア系の顔をしたウェイターがメニューを持ってきた。これなら安心と日本語で話しかけたら日本語

は、「コンバンハ、イラッシャイマセ」だけ。メニューに日本語表記があったので注文はらくだったが

話がちがう。あとでKさんに話すと、マスターは日本語を話すそうだ。しばらくすると店は千客万来で

大混雑。なかなか注文をとりにこないので催促すると、彼は「So busy」とニッコリ笑って行ってしまっ

た。客を呼び込めばあとはしらない、というわけだ。

白ワインのボトル、リゾット、ゆでたタコの足をスミで和えたもの、骨つき鶏肉のカツトマトソース和

えにサフランライスを添えたものを注文する。食事の最中土砂降りになった。外で食べている客の中に

は店内に駆け込むひともいたが、幸い風がなかったので小さな天幕の下でも濡れることはなかった。折

り畳み傘一本でどうしようと心配していた雨も15分ほどで止み心配がなくなったのでゆっくりしよう

とエスプレッソを注文して雨上がりの街を楽しんだ。

来るときに「ここはいいね」といったレストランはまだ賑っていた。「日本語」につられて損をしてし

まったが、料理はおいしかったのでよしとしよう。

大通りに出てすぐにスーパーはあった。日本でいえば一間間口のふつうの入り口があるだけで、スーパ

ーの入り口はきらびやかなものという日本的先入観ではいくら探しても見つからないわけだ。小さな店

ときいていたが、中はコンビニ二つ分くらいの広さで品物はそろっている。サンタマリアマッジョーレ

教会前のスーパーでしこたま仕入れたあとなので水とジャム、猫の顔のかわいいキーホルダーを買った。


ホテルの玄関でさっそく買ったタバコを吸ってみた。味は昔のハイライトのようにきつくてからい。や

はり安いだけのことはある。部屋に戻るエレベータでKさんに会った。「(歩き回って)問題なかった

ですか?サンピエトロ(タクシーは無事についたか)は大丈夫でしたか」と聞かれたので「おかげさま

ですべて順調でした」と答えると安堵の笑顔がかえってきた。添乗さんは大変だ。


二人とも風呂に入ったあと、ビール、パン、オレンジをならべてパーティーだ。バチカンの展望台には

登れなかったが、ジプシーの踊り、うまいビール、タクシー観光で得したことを祝ってビールで乾杯。

明日は、コロッセウム、トレビの泉、スペイン広場を見て、バチカン美術館、サンピエトロ寺院とまわ

って列車でフィレンツへ向かう。たった二晩だったが、このホテルともお別れだ。なごりをおしみなが

ら明日の支度をはじめた。大量のオレンジはどこに入れよう。


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