思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
センセー夫婦のイタリア行き飛行機、離陸から到着まで。



ボンジョルノ・イタリア2 12時間の空の旅




1時20分テイクオフ。なんど乗っても飛行機の離陸するときは気持ちよい。これをこわいとか気持ちが

悪くなるという人がいるけどもったいない。「現在ローマはくもり、気温18度、現在朝の6時20分。時

差7時間、飛行時間12時間10分」と機長のイタリア語と英語のアナウンスがあった。すべてわかるわけ

ではないがお約束の内容であるからこう言っているはずだ。西へ向かうときは過ぎた時間をもういちど

体験するマイナスの時差になるので得をした気分になるが、若返ることはない。

CAは日本人一人をのぞいてみなイタリア人だ、と思う。なにしろふだんイタリア人なんていうものに

会わないのでわからない。国際線のCAにはいろんな国の人がいる。

機内が落ち着いた頃、ユニセフへの寄付の封筒がくばられてきた。飛行機をおりるときにCAにわたし

てほしい、と言っているらしい。このように都合のわるいことの英語はわからない。目的達成でご機嫌

なお大師さまは千円を奮発した。


離陸後の行事もおわったので巣作りをはじめた。3人席を2人で使えるのだからなるべく快適にしたい

なにしろ12時間の旅である。その巣づくりもおわったころ昼食になった。こんなに早く食事になるの

だったらアリタリア航空の待合室であんなに食べるのではなかったと貧乏性をうらんでもしかたがない。

飛行機の食事というものは、機械的である。こちらの腹具合は忖度してくれない。メニューはパスタ。

さすが本場の味、美味いとおもったがそんなことはない。12時間もかけてイタリアから持ってくるはず

がない。純国産であろう。乗っているのはイタリアの航空機という魔術にかかっただけだ。


食事のワインの酔いもさめかけてきたころ退屈なので映画を見ることにした。前の座席の背中にあるエ

コノミー席の画面は近すぎて老眼にはつらい。遠近両用の眼鏡をずらしながら映画のメニューをさがす

のだがどうもうまく映らない。きゅうにでっぷりとふとったCAが「Can I help you」とやってきた。

とっさの展開にびっくりしたが事情はわかった。めったやたらに画面をタッチしているうちに乗務員を

呼ぶボタンにふれてしまったらしい。ところがテレビが映らないという英語がでてこない。しかたなく

やったことは、画面を指して「Its break」。これでわかってくれた。国際線の乗務員は全能の神である。

彼女はあちこち画面をタッチして「Freeze! don t touch」言ってもどっていった。あっそうかフリーズ

と言えばよかったんだとおもっていたら画面がまっくらになった。座席のモニターはすべて機内のPC

でコントロールされていることに気がついた。2〜3分すると画面はもとどおりになり、映画が見られ

るようになった。

映画は「ラルゴ」。イラン革命のさなか人質となった米国大使館員を救出する実話の映画だ。おりしも

シリアがごたごたしているときなのでおもしろい。

映画がおもしろくなってきたところで夜食がくばられてきた。これだから飛行機の食事はいやなんだ。

メニューは、パンとサラミソーセージ。はさんであったチーズが美味い。すこし寝ようとおもってワイ

ンをたのんだ。おもいきり足をのばしてしばらく寝たがやはり足がいたくなる。そういう時は機内を散

歩する。エコノミー症候群をおそれて歩き回る仲間がいる。歩いたせいか目が覚めてしまった。映画の

続きを見るのもいやなので、ほかのチャンネルをさがすがおもしろいものがない。では音楽でもと思っ

ても音が悪くて聞いていられない。しかたがないので飛行航路を示す画面としばらくニラメッコをして

いた。

そのあいだもうとうとしていたらしい。こんどは軽食のサービスで起こされた。飛行機というやつは3

〜4時間おきに飯を食わせるらしい。養豚場じゃあるまいし。

でてきたものは、キットカットのようなものとウェハースにナッツと飲み物いろいろ。これは食べずに

しまってしまった。時計をみると23時。もう10時間飛んだことになる。

ローマ到着は、現地時間の18時19分予定のアナウンスがあった。あと一時間でローマ着陸だ。機内

がそわそわしてくる。


18時24分ローマ空港着。東京時間25時である。かっきり12時間飛んだ。飛行機を降りて点呼をとり、

さて入国審査かと思っているとバスでターミナルへ向かいますという。ターミナルからそうとう遠い所

へ止まったらしい。やはりチャーター機はそまつにあつかわれる。

バスを降りて入国審査場につくと、添乗員のKさんが、「中国人の後ろには並ばないでください」とふ

れまわっている。おや、なんで人種差別、と聞くと中国人の入国審査は時間がかかるそうだ。まだ怪し

い人がいるらしい。日本人専用ゲートと化したわれわれの列は中国人の三分の一の速さで入国審査が終

った。日本人誇るべし。

荷物を受け取ったところでお大師さまがすっとんきょうな声をだした。なにごとと聞いてみるとユニセ

フの封筒をCAに渡さずに座席に置いてきてしまったという。はりきっていただけに残念な結果であっ

た。ロビーにでると現地ガイドのイタリア人がまっていた。2000年の都ローマへの第一歩だ。


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