2/2のねこさん 文は田島薫
屋根の上のねこさん 2
2〜3ヶ月前と同じように、家人の父親がいる老人ホームへ行こうと先週の中ごろ、
長野のローカル線の小さな駅のプラットホームのベンチに家人と座って、線路の向こ
うのフェンスのそばにある家の瓦屋根をながめてた。また屋根の上にねこさんがいな
いか、って。前回は陽のあたる暖かい日だったんだけど、今回は前日に降った雪があ
ちこちに残ってる寒い日だったんで、いないだろうな〜、ってふたりとも思ってたと
ころ、あ、ねこさんいた、って、どっかから、あの乳牛柄のねこさんが出て来た。
ふたりで、ちょっちょ、って舌ならして合図してみると、すぐにこっちに気づいて、
立ち止って、しばらくこっちと見合ってたんだけど、前回よりずっと早く前を向き、
さっさと屋根の尾根に上がって向こう側へ消えた。
いやいや、いつも気に入って歩いてるこの、平べったい石がならんだここも、きょう
はちょい冷たくてあんましいい感じじゃないね〜、いつもならゆっくり歩くとこなん
だけど、きょうは、思わず早足んなっちゃうんね〜、こ〜、さっと、右足あげてこん
だは左の後ろ足をさっとあげて、左の前足を、あり?こんだはどっちの足だったけ?
なんだか考えてたら足がもつれてきちゃいそ〜だね〜、あり?なんだか今呼ばれたよ
〜な気がしたね〜、あっちか、お、2人組がこっち見て手上げて笑ってるぞ、なんだ
か前にも同じことあったよ〜な気がすんだけど、気のせ〜だね。ま、とにかく、きみ
たちと遊んでるヒマはないんだよね、じっとしてっと、ほら、足が冷えてきちゃって、
も、行こ、っと左の前足をさっとあげて、こんだは後ろの右足をさっとあげて。