10/26の日記          文は田島薫



ウィークデーの都心散策


わが家はナッツなどの乾物類を年に何度か上野のアメ横に買いに行くんだけど、時間が

自由なわれわれがわざわざ混雑する日曜や祝日に行くこたないだろう、ってわかってい

てもみんなと一緒に休日の行動する安心感みたいなもんもあり、そうしちゃうことも多

い。でもこのごろ、土・日に図書館の本返却やレンタルDVD返却の用があるんで(たい

した用じゃない)、先週は秋晴れの木曜のブランチ後ふたりで出かけた。

まず池袋から地下鉄で飯田橋へ行き、自然木のチップ売ってる西側の高台の路地の店で

香り趣味の家人がそれを買い、東側への坂を下りながら東京大神宮にちょっと寄って、

そこそこ賑わってる内外の観光客たちを見物してから大通りを渡り、昔私が美大の同窓

の2人と共同で借りてたデザイン事務所の跡に行ってみた。まわりはでかいビルが林立

してて、そのころのモルタル2階建てらしいのがひとつだけあったんで、段ボール箱で

ちらかった中のでかい冷蔵庫の前にバナナのふさ積んでる70ぐらいのおやじに、2階が

事務所だったかどうか聞いたらそのようだとかなんとか。元のそれを知ってる家人が、

小さ過ぎるから違うと言うんで、よく見るとたしかに違ってるようだった。

そこからまた地下鉄で銀座へ行き、建て替え中の松坂屋の裏手のネットで調べたビルの

テナントの中にある店をなんとか探しあて、家人の母親の指輪や首飾りの入った小箱を

買い取り査定してもらったところ、金だと思ってた首飾りは全部メッキもので、指輪類

だけ値がついたんで相場価格で売り、同じく母親が溜めていた記念硬貨の束も見てもら

ったら、ほとんど値がつかないようで、自分とこじゃ買い取れない、って断られた。

そこから、歌舞伎座裏のジョンとヨーコがひいきにしてた、って小さな喫茶店へ行き、

ジョンとヨーコがいつも座った席でコーヒーを飲んでから、その先にある改装した老舗

画材店でオイルパステルや色鉛筆を買い、歩いて日本橋を抜けて、神田も抜けガード下

の手作りブティック街をざっと見物しながら、アメ横まで歩き、アメ横でナッツ類その

他を買ったころには、すでに6時半をまわってた。

さて帰って晩飯だ、ってとこなんだけど、家人が腹減った、って言うんで、じゃ、牛丼

でも食って帰っか?って言ってみると、うん、って言うんで、そばの吉野やへ入った。

小さな吉野やの1階はほぼ満席で、2階もどうぞ、って階段わきに表示があったんで上が

ると、先客のおやじがひとり牛鍋を前に日本酒を飲んでる。メニューを渡されると、酒

と肴のようなもんばっかりなんで、牛丼はないの?って聞くとそばの別のメニューを渡

された。どうもこっちは酒がメインテーマのスペースのようだった。家人にサラダなん

かのついたセットはどうだ、って聞いたら、家では充実した野菜たっぷりのやつばっか

り食ってるせいもあり、いらない、って言うんで牛丼2つと生ビールを一杯たのみ、家

人のリクエストで卵焼きも追加した。店を出るとこういった外食の時の習慣で、コンビ

ニで野菜ジュースを買いホームで立ち飲む中高年のふたりであった。


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