●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんとその仲間の合理的で楽しい交際会。



本を回し読む


最近、立て続けに今をときめく女流作家たちの本を読んだ。

桜木紫乃「ホテルロイヤル」「無垢の領域」、原田ひ香「彼女の家計簿」、湊かなえ

「告白」、篠田節子「長女たち」、林真理子「白蓮れんれん」など。

それというのも、太極拳の仲間の3人と本の回し読みをしているからだ。

回し読みは自分では絶対買わないだろうな、買えなかったな、という本が回ってくる

のが有難い。

思いがけないジャンルの本に巡り合ってちょっと得をした気分になり、視野が広くな

ったのも嬉しい。

読んだこれらの本はベストセラー作家の作品だけにエンタメ色も強く、とにかくスト

ーリーを追って息もつがせず読んでしまった。

何故そんなに読者の心を引き込めるのか。それは登場人物の心の動きをつぶさに掘り

下げて綴ることで、共感と発見を促すからではないかと思った。

さらに、感じたことはプロの作家というものはしっかり取材をし、多くの資料を読み

込んでいるということである。それは客観性を呼び、説得力につながり、読者を現実

のものとして難なく小説の世界に引き込んでしまうのだろう。


さて、同じ本を読むということは、同じ場所へ旅をする行為に似ている。

でも、同じ場所にいながらまったく違う景色を眺めていることもある。そこが面白い

ところだ。

3人で合評会など大袈裟なことはしないのだけれど、本を受け渡す際に、二言三言感

想を述べる。

「桜木紫乃は文章がうまいわね。それに世間をよく知っているっていうか、人間の機

微をついているので、なかなか読ませるわ」

「篠田節子はちょっと、理屈に走りすぎていて包容力のない文体ね」

「林真理子って嫌いだったけど、『白連れんれん』は感動したわ。冷静に白蓮を評価

していると思う。波乱万丈の人生につい引き込まれて読んじゃった」

「でも、朝の連ドラ『花子とアン』に白蓮がでてくるから、それでだいぶ得している

と思う」

など率直な意見を交わす。

それぞれ、読んでいる本の内容のどこかで自分の心を重ね合わせてしまうので、受け

取り方はさまざまだし、興味の在りようによって評価が異なってくる。

それはそれでいい。ただ同じ字面を追い、自分が感動、驚きを持って読んだ部分を他

の人も体験しているのかと思うととても愉快な気分になる。

回し読みの醍醐味の一つかもしれない。

うふふ、今度はどんな本がまわってくるやら・・・


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