思いつくまま、気の向くまま
  文は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
センセー、本と愛人関係のようです。



趣味は苦行?


『蔵書の苦しみ』というおもしろい本を読んだ。

膨大な蔵書の重みでアパアートを追い出された人、家族から文句がでて収納のためにコン

テナハウスを借りた人、蔵書のために家を改築した人。それぞれのエピソードをまじえな

がら本中毒のあれこれを書いている。

この本を読むと本中毒と読書中毒は関係ないことがわかる。

いつか読むだろうと興味のある本を買う人、いわゆる積んどく本である。外出のたびに本

屋に寄らなければ気がすまず読みたくもない本を買う人。この人は本屋の袋に入れたまま

積んどくそうだ。こうなると完全に中毒だ。本屋で見たときはおもしろそうだが、いざ買

って読みだすと面白くないので途中で放り出す人、などなど。しかもこれらの人はすべて

が学者とか評論家のように必ずしも本を必要としているわけではない。みな本が好きなだ

けだ。共通していることは不要になった本を処分できない、そして本棚からあふれた本に

振り回されている。


この本を読んで正直背筋がゾッとした。

紹介されている皆さんは万単位の蔵書家なので足元にもおよばないが、引っ越しのときに

相当量処分したとはいえ、まだ、7〜800冊ある。床は大丈夫だろうかと思わずなでて

凹みを確認した。自分の家であっても壊れてはこまる。地震も怖い。東北大震災のときは

本棚と揺れ方が90度違ったので平積みの本がくずれただけで助かったが、これが揺れ方

向だったら大変なことになった。部屋にいたら死なないまでも大けがはしただろう。

と、いうわけで本の整理をはじめた。大きく分けるとかつての仕事関係の本。趣味の本。

興味を持った本。出先で時間つぶしのために買った本。それといずれ読むだろうと買った

積んどく本である。まだあった。この本は珍しいから買っておこうと古本屋まがいの気持

ちで買った本がある。


いざ整理をはじめるとダメである。どの本にも愛着があって捨てられない。時間つぶしに

買った本なんか処分してもよさそうなものだがその時厳選して買ったものだから手放せな

い。内容が重複している本でも2〜3ページ違う事が書いてあるとそれも捨てられない。

それでは、とブックオフなどで買った105円の本を捨てることにした。内容よりも金額

である。こうすると何冊かの本が機械的に処分できた。

しかし、喜ぶのもつかの間であった。それもほんのつかの間。いつのまにか減った分だけ

の本がブックオフから引っ越してきていた。この苦行はいつまで続くのだろう。


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