思いつくまま、気の向くまま 文と写真は上一朝(しゃんかずとも)
シャンせんせいのガンリキエッセー。
センセーにはちゃんと本当の物の価値が見えてます。
インテリアグッズで写真を撮る
インテリアグッズで写真を撮る、といっても飾りのガラス玉で写真を写すわけではない。
よく行くリサイクルショップのウインドウに数本のレンズにまざって「インテリアグッズ」
と書かれたレンズがあった。
?こんなレンズがあったかな、と思ってよく見ると30年ほど前人気のあった一流メーカ
ーのレンズだ。それがインテリアグッズとは?
ここでハタと気がついた。7月のはじめ、こちらは本物の古道具屋で昭和一けたのカメラ
をみつけた。相場としてはタダのような値段がついていたので、使えたらしめたものとい
じくりまわしていると主がよってきて、「それは飾り物だよ。動かないよ、飾りだもの」
というではないか。すこし手をいれれば使えることがわかったので買ってきた。これがこ
のあいだから格闘しているカメラのうちの一台である。
話しはもどって、店の女の子を呼んで「見せてくれ」というと「インテリアですが」とい
って手渡してくれた。彼女の目の前で中古レンズを買うときの儀式をはじめるとあっけに
とられたように目をまるくしていた。丁寧に使われたものできれいなレンズだ。さっそく
買い求めるとふたたび「これはインテリア用ですけど」と念をおしてきた。
彼女が言いたいことはわかる。「これで写真を撮ってよく写らないなんて文句を言わない
でくださいね」と言いたいのだ。大丈夫、この店の無保証商品1000円にもみたないの
だから文句は言いません。
二か月つづく掘り出し物に気をよくしながら考えた。60年前のものならともかく、30
年たつとカメラのレンズがその機能を奪われ飾り物にされてしまう。「あなたはもう現役
じゃないの、飾り物みたいなものよ」と言われたようでちょっと寂しい。
写真は、となりの大学のジャズコンサートでスイングジャズにのって踊りまくる、連れて
きてくれたジイチャン、バアチャンに放り出されて一人で遊ぶ坊や。なんだかレンズと同
じ境遇みたい。
となりのママは踊りたいのをがまんしてついてきた。