思いつくまま、気の向くまま 文と写真は上一朝(しゃんかずとも)
シャンせんせいのガンリキエッセー。
慧眼シャンせんせい、世間批評ばかりじゃなくて自己批評もよくするんです。
なくて、ななくせ
「無くて七癖」というからには、なにか定まった七つのくせがあるのかと思っていたら、
無くての“な”に、ななくせの“な”をひっかけた、ただの語呂合わせだそうだ。
落語のくすぐりにつかわれる「親ばかちゃんりん蕎麦屋の風りん」とおなじ、言葉のあそ
びだ。およそ関係のない言葉がつづくと特別の意味があるのではないかと考えてしまうか
ら言葉とはふしぎなものだ。
くせというものには、先天的なものと後天的なものがあるようだ。先天的なものはやはり
遺伝だ。いつのまにか親の癖がそのままでている。歳を重ねるとなおさらだ。後天的なも
のはまわりからの影響だろう。
くせにはもう一つ自分でつくりだす癖がある。
自分でも笑ってしまうのだが、喫茶店などでアイスコーヒーを飲み終わって、さあ出よう
というときにかならずコップの底に残った氷を口にふくむ。これは自分で作り上げた癖で
ある。発端もわかっている。あるときアイスコーヒーを飲んだ後、味が濃かったので水代
りに氷を口にふくんだのがはじまりだ。それがいつのまにか癖になってしまいどこでもや
るようになってしまった。
「出物腫物ところきらわず」というが、ふつうの喫茶店でこれをやるのはご愛嬌だがホテ
ルのカフェや高級レストランでこれをやるとみっともない。なんともお行儀のわるい癖が
ついてしまったものである。これは、「無くて七癖」のあとにつづく「有って四十八癖」
のひとつだろうか。