3/18のしゅちょう             文は田島薫

ニール・ヤングのロック魂について

ニール・ヤングは10代から始めたロックを後2〜3年で70才になる今日までやり続けて

て、そういったロックミュージシャンはけっこう大勢いるんだけど、たいていのそうい

ったベテランたちはせいぜい数年に一回ぐらいに新作出すだけでふだんは過去のヒット

曲を持ってどさ回りコンサートくり返して生活費かせいでるようなんだけど、彼のすご

いとこは、今でも精力的に曲を書き毎年のように新作アルバムを出してる、ってとこだ。

それに、それを自分のホームページにアップし、聴きたい人は自由にどうぞ、ってだれ

でも無料で全曲聴けたりさせてる。

ユーチューブなどでも仲間のデビット・クロスビーやスティブン・スティルスやグラハ

ム・ナッシュなどの演奏が時々削除されてる中、フルライブ映像などもどんどんアップ

されてるのも規制したり削除する要求はしてないようで、1時間半から2時間以上のが、

いくらでも見れるのだ。

これは私の想像なんだけど、インターネット普及でCDが売れなくなっちゃった、って

文句言って規制を求めてるミュージシャンはいっぱいいるんだろうけど、彼はそれに組

しないことにしたのだ多分。なぜなら、そんなことしてるヒマはないから、自分の書き

表現したい曲が次々出て来るか、そういうことではなくて、作るのはつらい作業だけれ

どもそれに集中する使命感を感じてるから、それに、無料で聴かれる、ってことは、今

世界をおおう不景気の犠牲になってる金のない多くの若者に聴いてもらえる、ってこと

だし、金があっても、買ってまで聴く気のなかった人間も、ただなら聴いてみっか、っ

て、広く伝えることができる、自分の表現したいロック魂を。

もちろん、それができるのは、彼がもう充分に金持ちだから、ってことがあるからには

違いないわけで、苦労して書いて自費で録音して発表した貧しいミュージシャンなら、

金を払ってくれ、って要求したり規制を求めるのは当然のことだろうし、金はあっても

自分の仕事を正当に評価して欲しい、ってことで、数十億もかせいでるのに、税金の安

い国に住所を移す俳優なんかもそれは自由だろうけど。

自身の命にかかわるような重大な病気も経験し、若いころから、やがて老いというもの

が来る、って意識を持ち続けてたニール・ヤングはとにかく今以上に金をかせぐことよ

り、自分の表現を充実させたり広めたり、ってことの方に現在価値を感じてることは確

かなのだ。

これはニール・ヤング、って才能がなせる技だし、凡人にはなかなかできないことだけ

ど、芸術家のひとつの理想ではある。かつてジミ・ヘンドリクスは大成功をおさめた時、

自身には微々たる入金しかなかったのに、無料コンサートをしたがってたらしい。




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