思いつくまま、気の向くまま 文と写真は上一朝(しゃんかずとも)
シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、どうも、やっぱり欲しいようです。
聖催促チョコ
バレンタインデーともなると、現役時代はけっこうな数のチョコレートをもらった。
ところが仕事を整理するにしたがってその数も減ってきてとうとうゼロに近くなってきた。
最期のグループにのこった気のおけない友人も、プレゼントのチョコレートの種類に文句を
つけるので、とうとうくれなくなってしまった。
その中の一人に馴れ合いプレゼントの老妻もいる。
さびしくなったので「デパートのチョコレート売り場にバーさんたちがむらがっていたよ」
と水をむけると「だれにあげるのかしら」とすましている。
「亭主じゃないのかな」となぞをかけると「ホワイトデーがめんどうだからいらないと言っ
たでしょ」と切り返されてしまった。思えばあのころは若いチョコに不自由はなかった。
「そんなこと言ったかな、幸楽苑でごちそうするよ」と言ったら鼻先であしらわれてしまっ
た。幸楽苑というのは、近所にあるラーメンのチェーン店である。
14日になると「はい、ラーメンチョコ」といってチョコレートをくれた。
よく見るとスーパーで山積みになっているやつである。前だったら文句の十もならべるとこ
ろだが、ありがたくいただいた。
とうとう「義理」をこえて「催促」になりさがってしまった。
14日は、「口は災いのもと」という格言をつくづく身にしみて感じる聖なる日であった。