思いつくまま、気の向くまま 文と写真は上一朝(しゃんかずとも)
シャンせんせいのガンリキエッセー。
センセー、なにげないお返しに感服したようです。
含蓄がある言葉
猛暑が去り、ようやく秋がきたと思っていたら、あっというまに晩秋をとばして初冬にな
ってしまった。
初冬というと子供のころの白菜漬を思い出す。そのころは都内でも白菜は自分の家で漬け
ていた。どこからか手に入れてきた木の樽に塩をふりまきながら白菜を漬けていく。
もう食べるものに不自由する時代ではなかったが、それでも一つのものが沢山あるわけで
はなかった。お歳暮にみかんひと箱が家に届いたときの幸せ感といったら言葉にならない。
白菜の漬物といえども沢山あるのはうれしかった。まだ、ちゃんと漬いていない白菜をつ
まみ食いするのも楽しみだ。いまでも浅漬けが好きなのはそのせいかもしれない。
ご当地にも観光地がある。アジサイで有名な古刹だが、紅葉も見ごたえがある。
門前にみやげもの屋をかねた大きな漬物屋が二軒ある。その一軒に白菜の漬物があった。
二,三年前は漬物樽そのままで売っていたのがいまはビニールの袋に入っている。
量が多いので日が経つと古漬けになってしまう。古漬けは好まない。
店のオバちゃんに「浅漬けはある?」と聞くと、しばし漬物をにらむと「外からではわか
らないですね」と答える。それを聞いて「いっぺんに食べられないし、古漬けになっちゃ
うからどうしようかな」と迷っていると、「お客さんが選んでくださいよ。それが浅漬け
ですよ」と笑っている。
「なんでぃ責任転嫁か」とまぜっかえしたが、よく考えてみると、「自分が望むものは自
分で選ぶ。自分で選んだものは自分に責任がある」ということだ。
漫才もどきのやりとりのなかにも光る言葉があるものだ。