サニーイズム 文はさぬがゆたか
「世俗的」イラストレータ・サニーはココアメンバーですが、
ふだんのアート作業を栃木でやっていて、そこからの田舎だより。
サニーの晩秋五感体験法。
「 晩秋の湯 」
膝が痛くなるような寒さはまるで12月にでもなったようで
なんとなく憂鬱だったけど、午後になって西の空が明るく
なってきたのを幸いに町の風呂に出掛けてみた。
大きな公園の隣に造られているせいか、一枚ガラスの大窓や
露天風呂からも銀杏やケヤキの紅葉が見えるんじゃないかと
思ったが、まだ時期早々だった。
洗い場はできれば左右とも誰もいないのが快適なんだけど
今日の左手は、湯を散らかしながら洗うタイプな男。頬一杯に
シャワーをぶち込みながら、うがいをするのが気持ちがいいらしい。
右手の男はすごく泡だてて洗うのがいいらしく、その泡の一端が
流れこんでくる。
それではと、こちらも遠慮せずにワシャワシャとお湯を流しながら
細身の身体を洗い軽石で足裏をこする。すべすべになって今更
どうするんだよ年齢の窓越し風景なり。
打たせ湯で背中も腰も打たれ続け、ヘナヘナになって湯につかる。
大きい一枚ガラス窓のへりに、立ち膝姿が湯気の中シルエットで浮かぶは
ぷっくりとお腹の出っ張った全裸の男。
打たせ湯の落ちる音に混じって壁向こう女湯からの艶やか声が響いてる
せいなのか、目の前の全裸が婦人だったらどれだけ幸せかと思った。
サウナに入るも無駄な汗が出るわけでもなく、干涸びるんじゃないかと
ものの数分で飛び出ては、今度は泡風呂で尻まわりが痒くなるくらいに
リボンシトロンの気持ち。ああこれで十分に幸福だと思う。
喫茶室でストロベリージュースを飲みながら相撲博多場所を観たあと
表に出たらもう真っ暗で、まだ五時半とは思えない星だらけの空。
300円の入湯料で申し訳ない有り難さなので、玄関横で野菜を買って帰った。
白菜の美味しい季節になってきたので、また今夜も鍋かも。