思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
センセー、自ら決めた禁をやぶっちゃったようです。



また、やっちゃった





弟から「来週中古カメラショーがあるのを知ってるか」と言われた。

しばらくご無沙汰しているので、案内状もこない。

どうせろくなものはないし、爺さんたちで一杯だろと答えると「とんでもない最近は若い

女の子が来ているぞ」と言われていそいそと出かけた。


会場へ着くと爺様方が血相を変えてショーケースを覗き込んでいる。その数来場者の6割。

残りはというと、いたいた、若い女の子が。一人で来ているのもいるが、彼氏同伴も多い。

なかには、カメラには興味がないという顔をした彼氏そっちのけで古カメラ、古カメラと

いっても昭和30年代のフィルムカメラを手に取って、なれた手つきで操作をしながらう

っとりとしている。世の中変わったものだ。

古なじみの店主と目があうと「やあしばらく、元気ですか」と声をかけてきたが、その眼

は、「どうせ買わないんでしょ」、と言っている。


「おたがい歳をとりましたね。新しいものばかりじゃない」。こちらの古いということは

戦前のものだ。「もう昔のものは売れません」という返事を聞きながら、「どうせ買わな

いんでしょ」という眼が気になる。

しゃくにさわるので、ショーケースのわきに目をやるとジャンク品と書いた箱の中に一本

あってもいいな、というレンズをみつけた。箱の中同一値段と書いてあるがどうも安すぎ

る。「これも同じ?」と聞くと、そうだと言うので買うことにした。すると、皮肉をこめ

て何万円もするカメラと同じように丁寧に包んでくれて、わざと大きな声で「ありがとう

ございます」と笑いながら手渡してくれた。

そうだろう、皮肉のひとつも込めたくなる。その値、金300円也。コスモス一鉢も買え

ない。しかし、写りはバッチリ。これで三桁シリーズのレンズは何本になるのだろう。


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