思いつくまま、気の向くまま 文は上一朝(しゃんかずとも)
シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、粋と不粋の喩えで見立てました。
たちきり
娘芸者小糸にぞっこんの若旦那。
このままでは跡継ぎにできないといって、旦那と番頭が相談して100日間の蔵住まいを
成し遂げたら小糸とのことを考えてもいいと、蔵住まいを命ずる。
かたや小糸は、足しげく来ていた若旦那が来なくなった。さては心変わり、と毎日手紙を
送るがなんの音沙汰もないのはあたりまえ、来る手紙、来る手紙を番頭がおさえてしまっ
ている。
80日目、小糸はもうこれまでと最後の手紙を書いて床に臥せってしまう。
番頭は、手紙が途絶えたことでやっぱり商売女は…と安心する。
無事100日の蔵住まいをすませた若旦那に番頭が手紙の束をわたす。最後の手紙に、
「逢えないのなら、この世の別れ…」としたためられている。あわてて小糸のもとへかけ
つけると小糸はもうこの世の人ではなかった。
事の顛末をきいた若旦那は、「こんなことなら…」と地団駄踏むがあとの祭り。
ちょうどその日、若旦那が小糸のためにあつらえた三味線がとどいた。位牌のわきに三味
線をたてかけ線香をあげて拝んでいると小糸の弾く三味線が聞こえてくる。
(この下座が弾く“ゆき”は、しんみりとしていいですね〜)
涙ながらに聞きほれていると三味線の音がパタッととまる。若旦那が「どうしたんだ」と
聞くと「線香が消えました。たちきりでございます」。
「たちきり」または「たちきり線香」という落語のあらすじです。
先日、韓国大統領あての野田親書をめぐって外務省の門前でくりひろげられた光景をみて
「なんでぇー、たちきりじゃねーか」と笑ってしまった。
ちょっとした思惑違いがとんでもないことを引き起こす。おたがいに頭をひやして問題の
解決に取り組むべきだ。善隣外交という線香が消えないうちに。