●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
新シリーズ1回め、まずどきさんのくせからはじまります。



シリーズ なくて七癖

早口


私はしゃべり方が早い。

先日も久しぶりに友人と会い、たくさん話すことがあって、思わず焦ってしまい言葉

がもつれどもってしまった。長い付き合いの友人は心得たもので「あせらないあせら

ない、ゆっくりゆっくり」と笑いながら私の背中をさすってくれた。もうこうなると

早口病という立派な病で介護が必要なのだ。

早口病になるのは性格が関係するのかもしれない。

自分ではそれほどせっかちとは思わないのだけれど、早く結果を見たい、という気持

ちはいつもあるような気がする。元があるとその結果だけを見たいがために経過があ

る、そんな感じなのだ。その経過を楽しむというゆとりがない。

よく、“物事は地道に努力をしていれば結果は後からついてくる”と言われる。こう

した悠長な教訓は私には苦手だ。コツコツ努力型とは反対のすぐ結果を見たい結果至

上型なのである。

これは実に問題で、プロセスをおろそかにするので出た結果は最も軽薄で中身のない

ものとなる。砂上の楼閣のようにもろく、薫風に泳ぐ鯉のぼりのように中身がない。

おまけに早とちりとそそっかしいにつながりやすい。

まあこうして自覚はあるのだが、癖なのでこれも死ななきゃ治らない。

それでも前向きに考えれば早口も愛嬌のウチ、頭のフル回転でボケ防止に役立つかも

しれない。

テレビの長寿番組「徹子の部屋」で桐島洋子さんがゲストのときがあった。桐島洋子

に黒柳徹子、お二人とも早口で有名である。テンポよく話が進み、私は気持よくみて

いたが、同じ早口でも違いがあるのに気がついた。桐島さんの早口は飛躍があってと

きどき置いてきぼりになる。黒柳さんはさすがに女優なので早くても抑揚があり、歯

切れよく聞きやすい。そこで私の目指すは黒柳さんということにしておこう。


戻る