●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、真夜中に浮遊する。



眠れない夜に

ふと、目が覚めた。枕もとの時計を見ると2時55分。

なんでこんな時間に目が覚めたのだろう…まだ眠い。

トイレだろうか? いきたいような…いきたくないような…

でも、念のため今いっておいた方がこれから安眠できるかもしれない…

ボーとした頭でそれだけ考えると起きてトイレにいった。冷たい廊下から再び布団にもぐ

ると、なんだか眠気が覚めてしまっている。

眠ろうと焦るが、やたらと前日あったことやら、起きたらやるべきことなどが脈絡もなく

浮かんでは消える。

そーと目を開けてみる。夜の闇はオレンジを含んだ黒で、ねっとりと空気が重い。

私は魂だけ抜けて、ベッドに横たわる自分を上から見おろしてみる。

これは何者? なぜ、この者に魂を宿したのか? 世の中にはたくさん人がいるというの

によりによってこの自分の心の中に入り込んだのか?

今度は私がベッドに横たわって、上にいる自分を見上げてみる。

誰でもない自分が独り孤として存在していた。

私がこんなことを考えているとは他人には分からない。書いても書ききれず、話しても話

しきれず、私しか知り得ない内なる声はこれからも累々と堆積されていくのだろう。

眠れないことに焦って、また、目を開けてみる。

いつのまにか闇は青みを帯びた黒になり、空気は冷たく軽やかになっていた。

夜明けが近い。


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