●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの友人は自分なりの表現方法を考えたようです。



子守唄

先日、幼馴染みの男女11人が一泊旅行で湯河原に集まった。

最近この手の集まりがとても多い。皆年齢を重ねると後ろを振り返ってみたくなるの

だろうか・・・

温泉に入ってお酒飲んでおいしいもの食べて、幼馴染の気安さで遠慮のない会話が飛

び交う。

仲間に最近お孫さんが生まれおじいちゃんになったケンちゃんがいた。元級長で威厳

があって寡黙で紳士然としたケンちゃん。

誰かがいった。

「ねえ、ケンちゃんがお孫さんにデレデレしてイナイイナイバーなんてあやしている

姿、想像できる?」

みんながどっと笑って、できない、できないと首をふった。

すると、当のケンちゃんはぼそりと言った。

「子守唄を歌ってやろうかと思う」

ほう〜子守唄ね、それはすばらしい発想だよ、ケンちゃん。

おじいいちゃんの子守唄を聞きながら育つ孫なんて、ステキだね。

孫が大きくなって、万が一、横道に逸れそうになってもおじいちゃんの子守唄を思い

出せば真っ当な道にとどまるだろう。万が一、心が折れそうになったときだっておじ

いちゃんの子守唄を思い出せば幸せな気持ちになるだろう。

(ゴメン、万が一が縁起でもない状況設定で・・・でも、何があるかわからないのが

人生だもんね・・・)

きっとお孫さんはおじいちゃんの子守唄でスクスクいい子に育つよ。

心に届く子守唄、歌ってあげてね、ケンちゃん。


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