思いつくまま、気の向くまま 文は上一朝(しゃんかずとも)
シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、せこい動物園ごっこに行政の貧困さも見てるようです。
移動動物園
「移動動物園」と書いたチラシがはいってきた。
いまどき移動動物園なんてめずらしい、とよくみると近所の宅地販売の案内を兼ねたイベ
ントのチラシだった。このあたりの宅地は開発が終わると同時に完売という状態がつづい
ていたが昨今の不景気でそうもゆかなくなったようだ。
覗いてみるとモデルハウスのわきの空き地に案内所や売店とならんで鶏やうさぎを放した
囲いがあり、その隣ではポニーに乗せてくれる。移動動物園と呼ぶにはたわいのないもの
だが、子供達は嬉しそうに群がっていた。
この宅地は広い雑木林だった。「地主のご厚意により…」と枕詞がついていたが近所の子
供達のいい遊び場になっていた。それがつかのまの移動動物園と引き換えに取り上げられ
てしまった。
この宅地のまわりでも雑木林の買い上げを市に要請していたが、いずれも予算がないと応
じてくれない。そのかたわらで膨大な無駄遣いに精をだしている。
市は、不便な土地に新都市開発を気取って広大な土地開発を行ってきたが交通不便と頒布
価格が高価なためほとんどが更地のままである。
このままでは、密集地はますます無計画な密集地になる。満足な道路ひとつない都内の杉
並や世田谷の二の舞になることは確かだ。「防災都市作り」や「ふるさと運動」を標榜し
ながら、小禽を並べただけで移動動物園と呼ぶようなことをやっている。地方都市がいつ
までもあか抜けないのはこの辺に原因があるのだろう。
一度役人どもの頭の中を覗いてみたいものだ。