●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんのそれの順番もこのほど変わりました。



好物は先か後か

上等なワインを頂いた。夫は酒飲みだがあまりワインを好まず、私はアルコールに弱いと

きてるので、とてもボトル一本は空けられそうもない。残った上等なワインを料理に使っ

てしまうのももったいないなあ、と思いながら、目が飲みたいので開けることにした。

いままであまりお酒と親しんだわけでもない私が酒から学んだことは、酒を一番引き立て

るのは料理だということ。日本酒にはさっぱりした料理が、ビールには脂っこい料理が、

ワインにはコクのある料理がそれぞれ合うような気がする。

さてワインに対して薀蓄を傾ける知識など当然ないのだけれど、聖書を読むとぶどう酒の

ことが頻繁に出てくる。例えば、婚礼に招かれた宴でワインが足りなくなったというとイ

エスが水をワインに変えたとか、初めに良いぶどう酒をだして、酔いがまわったころに劣

ったものを出すものだ、とか。

そういえば、私が小さい頃、人の出入りが多くなにかと酒宴になる我が家では、母が始め

は1級酒で終わりの頃は2級酒を出していたようだ。

古今東西、お酒は初めに良いものをだして、酔っ払うほどに酒ならなんでもよいという順

序に決まっているらしい。

要するに酔っ払うほどに味なんかわからなくなる酔っ払いはなめられているというわけ。

ところで、料理の順序はどうだろうか。好きな物を先に食べるか、最後までとっておくか、

人によってさまざまだ。例えば、幕の内弁当などはどれから食べるか悩むところだ。

私は最後まで「取っておく派」で、終わりよければすべてよしのタイプだった。けれども、

去年の3・11の大震災以来、「最初に好物派」に転向した。

なぜなら、途中で地震がきたら食べられなくなってしまうから。さもしい根性だがいつな

にが起きるかわからないので、用心に越したことはない。


戻る