サニーイズム             文はさぬがゆたか


ソノ世界的イラストレータ・サニーはココアメンバーですが、
ふだんのアート作業を栃木でやっていて、そこからの田舎だより。
あの震災の悪夢がサニーにも小さな後遺症を残したようです。



「 思い出せない 」

まもなく4月に入ろうというのに、散るのを忘れたのか庭の紅梅がまだ

咲いている。ふとデジタルカメラで撮影していたのを思い出し日付けを

確認したら3月2日となっていた。こんなに長く咲いているのはそれだけ

寒いのか、それとも異変のせいか。さすがに鮮やかさは消えてきているし

桜の開花へ話題を変えなきゃいけないってのに。

そして車の修理もしていたんだった。ま、年がら年中どこかしこと直して

いるんだから珍しくはないけれど、探し回ったイグニション一式の交換だ

ったので厄介だった。火花を散らしながら「おおっ!この線とこの線で

エンジンが掛かるのかとビビッたのが3月8日だった。


上野の“トロ函”って名前のいかした居酒屋で退職した友人と飲み交わした

のもその週だったし、どうにか追加依頼された原稿数点を仕上げメール送信し

やれやれの気分でホームセンターに出かけたのが11日の金曜日だった。

そして買物を終え通リに出ようとしていたときに揺れ出したんだった。

そうだ、目の前で自転車に乗ったまま転んだ人がいたり、モルタルの壁が

波打ったり瓦屋根から埃が舞い上がったりした。車ん中でサイドブレーキを

引いたりしたけど、ハザードランプのスイッチに中々指が届かなかった

くらいに揺れた。

そしてそれから二週間も経ってもまだ揺れているようで、これからも揺れ続くのか

どうなのかと初めて記憶の液状化を感じている。



3月2日 梅満開だった




こんなんパーツのためにも一生懸命になれることも幸せ。




3月12日 朝陽の中届いた我が家の朝刊。この段階では
まだ原発事故は届いていなかった。

先週になって町の支援物質集積が決まったので、自分も大人用の
オムツとかをガムテープでまとめて持ち込んだ。受付も整理する
人達もいつもの町の人だけど、てきぱきとしていた。
こんな言い方はまずいけど起きてしまったことは、しょうがない。
どうしようもない。受け入れよう。
これからどう動くか、考えるかなんだと思う。
なんだかね、11日前までのわがまま放題で腐敗ぎりぎりな
日本よりいい時代になっていくんじゃないかと思えている。


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