思いつくまま、気の向くまま
  文は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、隠居の喜びを感じてるようです。



陽ざし

「部屋に陽がはいらなくなったなぁ…」

「そうでしょう、いままで忙しく動いていたから気がつかなかったのよ」

日ごとに部屋に差し込む陽ざしが短くなっている。それだけ太陽が高くなったのだ。

いわれてみれば時間に追われる毎日を過ごしていたときには、こんな些細な自然の変化には

気づかなかった。ひまになったおかげである。

昔、といっても大昔の人は今の何十倍もゆったりとした時間をすごしていたであろう。

そのなかで観察力にすぐれた人が、陽ざしや影の変化から暦を作ったにちがいない。

何年もかかったことだろうが、ただ忙しく立ち働いていたのでは日々の自然の変化に気づく

はずもない。


インターネットが氾濫するにつれますます世の中忙しくなった。

ネット社会というものは必要な情報を得るためには便利だ。しかし、情報の共有というとカ

ッコイイが他人と横並びの生活求めるためにあくせくするのはいかがなものか。また、安易

な情報の提供は、人から考えるということを奪ってしまった。そのうえ必要でもない「情報

のための情報」を得るために新しい機器を求めつづける世の中はけして正常とは思えない。

本来、機械というものは人類に幸福をもたらすために発明されたはずなのにいつのまにか機

械に使われる時代を作ってしまった。


わずかな差で機械に振り回される実社会を卒業することができた。

その僥倖をむだにしないで、日がな一日陽ざしの変化をみつめて世界をあっといわせる大発

見でもしようかな。


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