思いつくまま、気の向くまま
  文は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
耳の肥えたシャンせんせい、本気で悩んでるようです。



そこがむずかしい

となりの大学のコンサートへいってきた。

「となりの大学シンフォニーオーケストラ」という在学生、OB、客演からなるオーケスト

ラが不定期に開くコンサートだ。

「たとえ下手でも生の音はいいものだ」(或るギターは除く(笑))、という主義なのでこ

こへ越してきてから聴きにいくのは二回目になる。


オーケストラといっても大編成のオーケストラを想像すると間違いで、第一ヴァイリン、第

二ヴァイオリン、ビオラ、チェロとフルート、クラリネット、トランペットが各一人、打楽

器なしという総員17名の室内楽団のようなものだ。

指揮者はおらず、このオーケストラの顧問をつとめるセミプロ氏が弾き振りで演奏する。

小品はよいのだが交響曲となるとなんとも音がそろわない。この日もモーツアルトの25番

の第一楽章のみを演奏したのだが、管の音は飛び出す、弦は音が合わないと散々だった。が、

もとよりこれは承知のこと。「たとえ下手でも生の音はいいものだ」、の精神で聴いている

から気にならない。


では、どこがむずかしいか。

このような演奏会は、かならずアンケートをもとめられる。

今回も手渡されたアンケート用紙の曲ごとに○をつける言葉が、(大変よかった。よかった。

ふつう。よくなかった。)とある。この四つの言葉をどのような基準で選ぶかがむずかしい。

これが有料であるならば入場料に見合った感想はすぐに決まるが、素人の、よかったら聴き

にきてくださいという場合は困ってしまう。また、素人でも同じメンバーが何度もやってい

る場合と今回のようにそのつどメンバーが変わるときでは基準が変わってくる。

近所に、全日本吹奏楽コンクールで毎年高位に入賞する中学校がある。

大きなホールで開かれる定期演奏会は入場無料だが、この場合はセミプロの基準で評価すれ

ばよいので気が楽だ。

しかし、「となりの大学シンフォニーオーケストラ」はどう書けばよいのだろう。

彼らは、自分たちの実力を知っているから全部大変よかったと書くのも失礼だ。まさか、素

人の寄せ集めにしてはよかった、とも書けないし…。純粋に音楽的感想を書けばいやみにな

る…。


「となりの大学」は近隣地域との文化交流に力をいれている。コンサートの趣旨がわかって

いるだけに真面目に答えたい。それだけにこのアンケートはむずかしい。

土曜日の昼下がり、気持ちよく音楽を聴いたあと、急に現実にもどってしまった


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