●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
われわれの国にはいろんな神様がいる、ってお話。
おとぎ話シリーズ
断・捨・離
最近よく見かける言葉、断・捨・離。
物を増やさないで要らない物を片付けてスリムにシンプルに暮らそう、という考え方。
あれはいらない、これもいらない、と物をそぎ落としていくうちに今もっとも必要なもの、
大事なものが見えてくる、というわけで自分を見つめなおす機会として、片付けられない
多くの人の共感を得ているようだ。
断・捨・離、それにしても厳しい漢字だなあ。
私なんか字面を見ただけでひるんでしまう。
断・捨・離信奉者のミヨちゃんがいう。
「これは物に支配されないという意思的な行動なのよ。美学なのよ。」
そうね、きっとこのくらい激しい言葉を使わないと人は欲望に負けて物を少なくできない
のかも。
さらにミヨちゃんは続ける。
「未練は浅ましいし、あれ欲しい、これ欲しいと衝動的に手に入れるさまは醜い。人の生
き方って欲望が少ないほどかっこいいと思わない?」
ああ、ミヨちゃん相当無理してるわね。もうちょっと肩の力を抜きましょうよ。
私なんか住宅展示場のようにとりすました無味乾燥の家には住みたくないし、ショールー
ムのように片付いたキッチンでは料理をする気にならないわ。
がらくたでお気に入りの物に囲まれている方が安心するもの。
この世にはトイレの神様がいるように物の神様もおわします。
♪物を一度使えば神様が宿るんやで。神様はどんな思いで手に取り、手に入れ、使い込ん
だかすべてお見通しなんやで。物の神様を大事にすればべっぴんになれんるやで♪
ときどき私は物を粗末に扱ってしまい、物の神様にこらっ!と怒られている。