●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
2次被災者を出さないように、ってことも忘れちゃいけない。



シリーズ 震災余話

自粛不況

東京で商売をしている友人から電話がかかってきた。

「もう、心がくじけそう。品物がまったく売れないのよ。震災後は皆必要なもの以外は

自粛、自粛でお金を使わないでしょ。ムードって怖いわね。いったん冷え込むとドドド

ッて波及しちゃうの。被災地じゃない人もみんな不安なのね。余震もあるし、節電で町

は暗いし、福島の原発事故も怖いし…将来、日本はどうなるかわからないもんね…だか

ら、誰も景気良くお金を使おうっていう気持ちにならないのはわかるけど…でも、東京

で商売しているものにとっては被災地の人たちと共倒れになるわけにはいかないのよ。

補償金も義捐金ももらえるわけでもないし…どうやってこれを乗り切ろうかと心配で…

心配で…」

悲痛な話だった。

経済は営々と積み上げてきた仕組みの中でお互いに補完しながら回っている。一つ歯車

が狂って、急に商品が回らなかったり、通常の経済活動ができなかったら、日本の息の

根が止まってしまうのだ。

妙な自粛ムードで、日本のあちこちで外食業や観光業やそのほか不急の品を扱う業者か

ら悲鳴の声があがっている。私たちが応援しなければならないのは、こんな自粛不況に

悩む零細企業の人たちなのかもしれない。

こんなスローガンはどうだろう。

お金は正しく使い、正しく貯める。救国散財。

放射能は正しく怖がり、正しく安心する。憂国節電。



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