●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんのシリーズ、今回はもっと欲しいことについて。



会話シリーズ

町の会話

私の住む町はまだ昔ながら小売店がある。

店員なんていない家族経営で、店のご夫婦や息子はお客とともに歳を重ねていく。歴史

を共有しながらいつのまにか顔見知りとなって、店の人と世間話をしながら買い物がで

きる。

また、家の近くのスーパーは地形の関係で、1階が保存食品や雑貨とレジ、2階が生鮮

食品の売り場だ。当然2階から買い物を始めて1階へ降りる流れになるのだが、その際

カートを使用している場合はエレベーターを利用しなければならない。当然、初めに乗

った人は階を示すボタンの前に立ち、開、閉のボタンを担当する羽目になる。降りる際、

後から乗った人はその人に「ありがとう」の声をかけ、「どういたしまして」の会話が

飛び交う。

とても気持ちの良い光景だ。

都会から会話が無くなってから久しい。

混雑した街中や通りで人とぶつかっても「ごめんなさい」がない。満員電車で「中へ詰

めていただけますか」の一言もなくぐいぐい押しまくるだけ。

日本人はなんだか他人にはとても不機嫌な気がする。

「お客さまは神様」の精神でお金を出す側に対してのサービスはとても行き届いている

のだが、利害関係がなくなると途端に無愛想だ。

アメリカではもっと気軽に「サンキュー」「ソーリー」が飛び交い、スーパーではお客

側が「サンキュー」というではないか。

町の会話があったらもっと生きやすい社会になるかもしれない。

(“一葉もどき”は来年の第3週まで冬休みを頂きます。良いお年を!)


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