●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、衣装に鋭い目を持った人の血筋です。
夏の終わりに(4)
まだ残暑が続いているというときに早くもファッション通販カタログ秋号が届いた。
前ほど買う気はないのだが、流行のファッションを見るのは楽しい。
人には食道楽と着道楽があるらしいが、私は家系的に着道楽のようである。
父の服装に対する目は厳しく、成長した娘たちにまでダメだしをして辟易させたくらいだ。
母は普段はあまりかまわないほうだったがでかけるときは、俄然張り切ってとてもおしゃ
れをしていた。大柄の着物とかキンキラキンの帯とか結構派手目の着物をたくさん遺して
いる。
父が晩年、入退院を繰り返していた頃のこと。
病院内でのパジャマまでにもこだわっていて、気に入らないと母が用意したパジャマに難
癖をつけるのだった。
手術後に届けた買ったばかりのパジャマを、色が派手で品がないので取り替えてこい、と
切ったばかりの胃の傷口をおさえながら言ったそうである。
まったく、パジャマごときに…病人に上品も下品もないのにねぇ…と母はぼやいていた。
そんな両親から生まれたせいか私は子供のときから着飾るのが好きだ。
洋裁や手芸で自分の好みのファッションを仕立て上げるのは無上の楽しみなのである。
もっとも汗まみれになる夏は、Tシャツに白のチノパンで過ごしてしまうのでおしゃれの
余地はないのだが、これから涼しくなる秋はおしゃれ本番だ。
着るものをたかが人を包む包装紙ということなかれ。
この包装紙には女の夢や願望、やる気、さらにそれまでの生き方や人格までが如実に表わ
れるのだから、ゆめゆめおろそかにはできない。