●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
達人もどきさんは、多分あなたの目の動きも見のがしません。
シリーズ 生き物をダシにして
目は口ほどにものをいいい
私が子供の頃、我が家でヤギ2匹とウサギ一匹を飼っていた。
ヤギは毎朝近くのエサとなる草地へ連れていかねばならず、それは子供たちの仕事であ
った。
仕事といっても私はまだ幼く、小学生の二人の姉のあとをただくっついていくだけだっ
たと思う。草地に棒を立てヤギをつないでおき、夕方になると迎えにいった。
すると、ヤギは一日中ぐるぐると棒の周りを回ったせいで綱が絡まり、身動きとれなく
なってメエーと鳴いているのだった。今でもそのときの三白眼の気弱で恨めしそうなヤ
ギの目が忘れられない。
ウサギは白く長い耳の片方は垂れていたので「たれ子」と呼ばれた。私はよく檻の前に
しゃがんでたれ子を眺めていた。つりあがった赤い目をまっすぐ前を見据え、大抵口を
もぐもぐさせている。その様子はヤギとは対照的に気が強そうで泰然自若としていた。
話は変わるが、ご存知のように民主党代表選挙では菅氏と小沢氏との一騎打ちであった。
菅氏の笑い顔は愛嬌があって好感度抜群だが、ときどき魚が死んだような目をするのだ。
小沢氏の方はいつもはれぼったい暗い目をしていてむっつりとめったに感情を表さない
顔なのに、選挙のために支援者周りをしたときは満面の笑みなのには驚いた。
そして、予想通りというべきか、意外な大差というべきか、菅氏が再選された。決まっ
た直後、立ち上がった菅氏の顔には笑みはなく、険しく厳しい目をして一礼をした。前
途多難が目に出ていた。
目は口ほどにものをいい、というが、人間は動物ほど単純ではないけれど、なにかの一
瞬には本音をみせるものである。