●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回のもどきさんはエグゼプティブに馬を連想したようです。
シリーズ 生き物をダシにして
サラブレッド
デパートをブラブラ回遊していると、足元が突然変わる一角がある。じゅうたんやフロー
リングで一段高くなっったあの特選売り場だ。
ピカピカのショウケース、ゆったりと並べられた品物、照明までがぐっと抑えられた上品
さで、「ここはそんじょそこらのものとはちょっと違いますよ」といった雰囲気。それは
洋服売り場だったり、バッグ売り場だったり、文具売り場だったりで、ブランドを誇る高
級感で客の夢をふくらませる。
「こういう売り場は一層のこと“エグゼクティブ・コーナー”とか書いちゃえばいいのに」
とは友人Y子の弁。
そんなことあからさまに書かれたら入るのが恥ずかしいじゃない……
さにあらず、かえって紳士淑女の“エグゼクティブ・コンプレックス”をくすぐるんだそ
うな。
今は決してエグゼクティブではないけれど、つかの間エグゼクティブになりたい自分に、
或いは、もしかしたら将来エグゼクティブになるかもしれない自分にふさわしいものはど
んなもの?どれどれ…ってということになるんだそうだ。
エグゼクティブねえ。
動物のエグゼクティブといえば文句なく競争馬、あのサラブレッドだろう。姿、形、動き、
バランスどれをとっても美しくそして高価である。だから正統な血筋の代名詞にもなって
るくらいだもの。