●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回のもどきさんは、タコから人生を教えられた(?)ようです。
シリーズ 生き物をダシにして
タコのパウル君
サッカー占いで世界的に有名になったタコのパウル君が死んだ。
丁重に火葬されて(焼きダコ?うまそう〜なんて不謹慎なことはいいません)碑まで建
てられるんだって。
パウル君はすでに高齢だったらしい。つまり生涯をまっとうしたのだ。
思えば幸運なタコだった。??
ドイツの片田舎の水族館で飼育され、窮屈な水槽の中での平凡な飼いならされた暮らし。
そこへ突如としてW杯南アフリカ大会のドイツ代表の試合の占いの役目を仰せつかる。
そしてあれよあれよという間に7試合すべての勝敗を見事に的中させたのだ。
しかも世界中が熱狂したこの晴れ舞台なのだから、注目度抜群。一躍スターである。
つまり、パウル君はようやく晩年になって、運と名声と長寿を手に入れたのだ。これを
幸運といわずなんといおうか。
では果たして彼の生涯は本当に幸せだったのだろうか。
人間の目からみれば成功者として賞賛を浴び、栄光の生涯だったかもしれない。
でも、なんといってもタコはタコ。痛い、ひもじい、不快、など本能の感覚だけしかな
く感情はない。
いくら有名になったとしても、エサの質が多少よくなったぐらいで閉鎖された退屈な水
槽生活に変わりはないのだ。幸せだったか否かは、タコはしゃべらないので憶測による
人間の感情移入による評価しかない。いくら惜しまれようが碑まで建てられようが、パ
ウル君にとって、「そんなこと知っタコとか」なのだ。
さて、ここからが本論。
人間だっておんなじ。しあわせなんて、他人が決めるもんじゃなくて、本人が決めるも
んなのよね。