●連載
がたやま娘のひとりごと      文はこんのたえこ


地方文化都市山形で、世界の様々なことを感じ考えている
賢くうら若い(?)娘の話を聞こう、疲れたおじさんおばさんたちよ!

たえちゃんの好奇心は、からだにいー挑戦中に冒険までしちゃうんだす。



断食道場後編

施術が終わってからは自由時間なので、私は外出した。近くの牧場に行こうと思った

のだ。

地図を見て、だいたいの方角を頭に入れた。っていうか、その地図は見ても至極分か

りにくいものだった。そして、ものすごい田舎なので、道路が複雑ではない。だから

大丈夫だと思ったのだった。

しかしそれは大誤算だった。

まず最初っから道を間違えた。そして出発地点に戻った。そうしたら、一緒に宿泊し

ている人と会って聞いてみたら「あぁ、あそこメッチャ遠いですよ。歩いていくのは

とっても大変だし、バスもちょうどいい時間がありませんね〜」と言われた。彼女は

その道場のリピーターさんだった。バスの時刻表を見たら、確かに1日に1本だった。

仕方ないので、暇そうにしている、目の前のタクシーで行くことにした。

タクシーの運転手さんから「おねえさん、どこから来たの?どこに泊ってるの?」と

聞かれたので、山形から来たことと、断食道場に泊っていることを話したら「あー!

断食ねー!何で?おねえさん痩せてるじゃない!しっかり食べなよ〜」と言われた。

確かにその牧場まではかなり遠かった。渋滞もしていたので「ここから歩いた方が早

いよ。歩いて10分くらいだからさ」と言ってくれたので、そこから歩くことにした。

ちょっとした坂道をトコトコ歩いて、ほどなくして目的の牧場に到着した。とっても

嬉しかった。大きな乳牛を見て、小躍りした。ひとりでハイテンションだった。

近くにはバーベキューレストランがあって、牛さんたちは複雑な気持ちじゃないのか

な、とちょっと気の毒に思った。

酪農と乳製品の加工、という視点を、乳製品を制限した食生活をしている私は、個人

的な思想と共に、いろいろ考えた。

私の思想のまとめを簡単に言えば、酪農や乳製品、その加工品は、人間の高い想いが

形になった、素晴らしいものなのだ。それを私たちは当たり前のように享受している。

「当たり前」の裏打ちには、素晴らしい人たちの地道な努力があるのだ。それを忘れ

てはいけない、と。

で、そんなスゲェことを考えながら私は、施設への帰路についた。

バスもタクシーも不便なので、もちろん徒歩だ。ずーっと歩いた。ひたすら歩いた。

ずーっと来た道を振り返ると、美しい山と草原があった。時計を見ることはしなかっ

た。時計を見たって距離は縮まらないから、ずっと歩くしかないのだから。

断食をしていても、食べ物が少なくても、私には「歩く体力と気力がある」という事

実をしっかり体感していて、むしろ嬉しかったほどだった。空腹感や喉の渇きも感じ

なかった。


そしてヘロヘロになりながら施設に到着して、牧場から歩いて帰ってきたことを告げ

たら、みんなびっくりしていた。


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