●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回のもどきさん、沖縄の帰路。思いが溢れます。



シリーズ あんな話こんな話

青の沖縄

飛行機が那覇空港を飛び立った。

陸地が大きく斜めに傾き、飛行場に隣接する自衛隊の基地や、ごちゃごちゃとくすん

だ那覇の町並みが次第に遠のいていく。高度があがり海が見えると、島を白い波が帯

状の輪となって取り巻いていた。

さよなら、沖縄、また来るね。

ゆったりとした時の流れに身も心も投じた沖縄を振り返りながら、沖縄らしさを象徴

する珊瑚礁、蘭の花、紅型、琉球ガラス、三線の音色などすべてものが鮮やかで強烈

な色と音であるのに気がつく。けれど私の頭は音のない、ただただ青い空と青い海で

いっぱいである。

この5日間海を見ない日はなかったせいだろうか。いろんな青を見たような気がする。

珊瑚礁内の澄んだ海面のセルリアンブルー、遠く沖に向かって広がる濃い群青色、太

陽に反射する輝く波間の青、海岸に寄せては返す白いレースのような透けた青。そし

て刻々と変化するクリアな空の青。

美しいのに哀しいのはなぜだろう。傍観者の私でさえも沖縄の立場に想いがいってし

まう。

「基地の島」と「サンゴ礁の海に囲まれた南の楽園」と二つの顔をもつ沖縄。

そういえばパンフレットにこんな歌が載っていた。

「唐の世から大和の世 ひるまさ(こんなにも珍しく)変ゆる この沖縄」

世変わりの歌である。

中国へ朝貢を続けた王国、明治の琉球処分による沖縄県、そして敗戦による米軍統治

下、日本に復帰した沖縄県へとめまぐるしく変わっていった。

その歴史は切なく哀しい。

島内をちょっと車で走っただけでも沖縄の貧しさが一目でわかる。民家はつましくく

すんでおり、ちょっと立派な建物があると思えば、ホテル以外は官公の施設なのであ

った。土地は痩せていて農業も工業もふるわない。産業といえば観光だけが頼みの綱。

太平洋戦争でたくさんの犠牲をはらい、今なお、基地問題で我慢を強いられている。

決して青は哀しみの色ではないのに・・・



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