●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
梅雨生まれのもどきさん、紫陽花への思いもひといちばいのようです。



シリーズ あんな話こんな話

紫陽花の頃

いまどき、町内を散歩すると各家の紫陽花が今を盛りと咲いている。

地味だけど趣のあるガクアジサイ、華やかで存在感のあるピンクやブルーの西洋アジ

サイなど、その家の雰囲気や持ち味を醸し出してしまうから不思議だ。

紫陽花の色は時とともに変化していく。

白っぽい蕾が顔をのぞかせたと思ったら大きく膨らんで薄緑に、淡いピンクからたち

まち明るいピンクになり、さらにブルーが加わり次第に濃い紫と変わっていく。

そんなことから紫陽花は昔から移ろいやすい人の心に見立てられる。

 あじさいや 心模様は 七変化

迷いの数だけ色変わりするのかもしれない。

紫陽花は小さな花が寄せ集まってひとつの大きな花を形作る。小宇宙みたい……当然

光る花びらと翳る花びらができてしまうのも因果なことだ。

あじさい公園を歩いていたら

――紫陽花ってたくさんの雨の涙を吸って大輪の花となるんだね…

誰かがいったっけ。まるで詩人のような言葉……

公園などに植わっているあじさいは背が低く、花よりも

こんもりとした株としてみてしまう。花の下には湿った闇があって、それは秘密を隠

したような命の闇のようだ。  

 雨吸って 重たげなる 紫陽花の

         花の連なり 群衆のごと

雨が降ったりやんだりの梅雨の頃になると、人はなぜかとても心がデリケートになる

ものだ。



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