「天への階段」
たぶん数年前にも同じようなことがあった。その時と違うとしたら、ただ季節が
冬の真っ最中で息が真っ白くなるくらい寒い夜だということ。
以前の時。バシャバシャ雨降る夏の夜、車を運転をしていた。前を走る車数台が
急に左右に蛇行する「オッ! 何だ?何だ?」と自分もつられながらハンドルを切
った。
その瞬間に見た黒い塊、ずぶ濡れの黒い塊は、猫の轢死体だった。
そのほんの数秒にハンドルを切りバックミラーを見れば、同じように蛇行のヘッ
ドライトが続く。
「何だよ この胸騒ぎ・・・・」
「誰かが轢いたんだ!自分じゃないし・・」
「関係ないじゃん!」
なのに
「何だよ この胸騒ぎ・・・・」
ハンドルを握りながら自問し自答したのが信号を数カ所過ぎた辺りだと思う。
Uターンし、その現場に戻った。轢かれたばかりらしく酷い損傷ではないのがせ
めてもの救いだ。
車の通過を気にしつつ、亡きがらを車道から際に運ぶ。それだけしか出来ない。
「かんにんなあ〜!」と
手を合わせる。後は飼い主に発見してもらえるよう願う。コンクリートの上で轢
きちぎられていくより、まだましだと思うだけ。そうにしか出来ない弱さにヘキ
ヘキ、どうにか天に届くようにと。
それと同じようなことが先日もあったというわけ。
やはり道路脇まで移した。手を合わせる。翌日に通過したらまだそのまんまで心
がキューっとなったけれど、数日後にはいなくなっていた。
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