●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんはお祭りが大好きです。



シリーズ あんな話こんな話

ご町内話最終章 祭り

子供の頃から夏が好きだった。

夏になると「祭りだ!花火だ!盆踊りだ!」と躍りたくなる。

それは子供のときの体験が身についているからかもしれない

賑やかなのが大好きな私の母は、夕暮れ時風に乗って、お囃子やドーンという花火の音

や東京音頭の歌が聞こえてくると、私の手を引いて家を飛び出したものだった。だから

今でも祭り、花火、盆踊り、夜店ときくと私の血は騒ぐのだ。


我が町内も8月21〜22日はお祭りがある。近くの八幡神社への奉納の意味とこども

に故郷意識と思い出つくりにと、町内会は毎年この祭礼行事に力を入れるのである。

祭りでは決して立派とはいえないが、一応こども神輿とリヤカーに装飾を施した手造り

の山車が町内を練り歩く。その日ばかりは紅白の幕を張ったお神酒所ではテープで笛や

太鼓のお囃子を流し雰囲気を盛り上げ、町の長老がどっかり座ってちびちび酒を飲んで

いる。こんな光景は遠い昔の子供の頃と同じ。“ご町内は安泰”といった風情でなかな

か郷愁を誘うのだ。


ところが肝心の今どきの子供ときたら、夏休みといえば、海や山への旅行や家族旅行な

どイベントがたくさんあるせいか、祭りの行事はさほど積極的ではない。暑いさなか親

に尻を叩かれて参加したもののうなだれたように山車を引いたりしている。懐かしんだ

り楽しんでいるのは大人ばかり。

それでも唯一町内がひとつになって盛り上がる大切な行事だ。当番理事の私はまず寄付

を集めることから始める。子供たちのお菓子代にお揃いの法被代にして良き思い出とな

ったら嬉しい。



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