●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
役人の癒着はこんなせこいところでも。



パスポートの写真

パスポートの有効期限が切れていた。

今のところ海外旅行の予定はないけど、こういうことはいつでも行けるように暇な

ときに準備だけはしておこう。

思い立ったが吉日、とにかく更新しておくことにした。

必要書類に戸籍謄本、古いパスポート、そして写真。

問題はその写真である。

こうした証明写真はとかく指名手配の犯人みたいに人相が悪くなる。原因はあの証

明写真ボックスでとるときの焦りと緊張と時間的なゆとりのなさのせいだ。

そこで、自分の家でくつろいで撮ってみては? 今どきデジカメの性能もいいし、

パソコンで自由自在に大きさや明るさも変えられるし、プロとそんなに遜色ないの

では?

というわけで、家で写して自分でプリントアウト。我ながらほれぼれとした(?)

それなりの出来具合で、大きさも規定どおりにカットして、完ぺきな顔写真ができ

あがった。さらにあれがダメなら、これを、と差し替えられるようにと予備に2〜

3枚用意したほどの周到さ。

ま、半日かかったけど仕方がない。

いよいよ準備万端整えて意気揚々とパスポートセンターへ出かけた。入り口で男の

人が「証明写真3分、1050円」のチラシを配っていたが、私は、ふん、ちゃん

と用意してるもんね、と心でせせら笑い受け取らない。

窓口は夏休み直前のことだったので、すごい混雑で1時間くらい待たされてやっと

私の番。

係員に書類と写真を渡すと、写真をしげしげみて、これではだめです、と冷たく言

うのだ。えっ、どうして? と聞くと、背景が暗すぎます、だって。あわてて、予

備の写真を見せたがすべてNG。

係員は威厳をかさに、そこの廊下をまっすぐにいった左に写真屋があります、そこ

で撮るように勧めるのだった。

仕方がなく写真屋で撮り、私の顔は陰気で不機嫌そのものの。おまけに1050円

の出費。

私のお手製の写真と仕上がりはあまり差がない。建物に3つある写真屋の1つを指

定し、窓口の番号の紙切れを渡されたということは、絶対係員と写真屋はつるんで

いるな、と思うしかないぞ。


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