●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
謙虚なもどきさん、どんななものからも学びます。
いい塩梅
秋ナスがおいしい。
つやつやとしたナス紺の色といい、下膨れのやさしい形といい、ボリューム感といい大好
きな野菜のひとつである。
煮てよし、焼いてよし、揚げてよし、そして極めつけはお漬物。糠漬けはもちろん、塩を
振っただけの浅漬けも捨てがたい。
最近の私のお気に入りは、ナスを薄くいちょう切りにして、ボウルに入れ、塩を手に取り
軽くもみこんでから10分置く。しんなりしたナスの水気を軽く絞り、砂糖としょうゆ、
それにしょうがとけずり節であえた一品。
このときの塩加減が舌触りに関係する。いい塩梅を生み出すには塩を多くしないこと。
“塩梅”という字は今はあまり見かけず、現代の当用漢字なら“按配”となるのだろう。
すべての物事の様子をあらわす按配という言葉・・・
相手のすべてを知ろうとはせずに、響きあうところで快くつきあいを続けていきたいと、
私はどこかで考えている。
塩を加えたり、減らしたりしていい按配のおつきあい。
けれどももし、その味が変わったら…。
それはおつきあいの関係が変化する時なのだろう。
それを、わたしはナスから教わった。