思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいの「ぼけのたわごと」、タイトル変えました。
シャン先生、ノリピーの社会復帰の難しさも人一倍心配してるようです。


古本市 

    

久しぶりに神保町の古本市にでかけた。

前にも書いたとおり、床の上にあふれだした本の山を整理すべく苦労していたので遠ざかっ

ていた。禁酒、禁煙の峠は2年目あたりにあると言われているが、やはり2年目に禁断症状

がでてきた。

天気も良いことだし、見るだけと固く心に誓って出かけてみると、ウィークデイのせいもあ

ってか年寄りが7割という人出であった。

言葉は悪いが、あんな爺さんが文学書を、こんな婆さんが美術書をと夢中になって探しまわ

っているのを横目に見ながら歩いていたが、やはり麻薬というものは簡単には断ち切れない。

専修大交差点から駿河台下までの歩道に並ぶ書店の三分の一ほど過ぎたところではもう本を

手にとってみている。半分を過ぎたころには夢中で本を探す爺さまと化していた。絶対に買

わないぞという心に、まあ文庫くらいならいいだろう、という悪魔の囁きが打ち勝ってまず

「ゑげれすいろは詩画集」を買う。


己の決心の弱さをなげきながら歩いていると、「歌舞伎百題」を見つけてしまった。さっき

の文庫本は買うんでなかったと後悔しながら、気がつくとその本をぶら下げて歩いていた。

これ以上ここに居ると危険だと駅に向かって歩いていると、またあった。明治時代の写真技

術書「写真自在」である。最盛期には一万円をくだらない値で売っていたものが二千円。も

う、写真関係の本は買わないことにしていたので、二千円あればあれも買える、これも買え

ると目をふさいで帰ってきた。


ところが翌朝は前日にも増して禁断症状がひどい。よく使う手だが、買うことに迷ったもの

は一度見過ごして次に有ったら買うということにして出かけてみたら、このような本を買う

人がいなくなったのか、前日の書棚に鎮座ましましていた。どうせ売れないのなら、と値切

ってみたら敵はちゃんと値打ちを知っていてビタ一文まからないという。

言い値で買ったあと、ふと隣の店をみると一冊の本が手招きをしている。坂東三津五郎と武

智鉄二の対談集「芸十話」である。武智鉄二という人はあまり好きではなかったのでこれま

で買わなかったが、歌舞伎、文楽、能に親しむ人には良い本であろう。これは市価の半額と

いうことであって、この2冊をかかえて早々に退散した。

とどのつまりは、4冊の本が増えてしまった。ヤクというものは本当に恐ろしい、というお

話しです。



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