●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
新聞記事から表情を追加のシリーズ、裕ちゃんが集団で集会か?



新聞ネタ独白シリーズ

裕次郎二十三忌

すごいなあ〜

石原裕次郎の23回忌法要。

国立競技場に「総持寺」が建立されてたちまち裕次郎寺になっちゃうし、参列したファン

が11万7000人なんだって。テレビは実況中継するわ、スポーツ紙は特別号外まで配

るわ、で万事ケタ違い。

そうだよなあ、裕ちゃんは国民的スターだもんね。

でもちょっと異様だね。


昔、ボーイフレンドと裕次郎主演の映画を観にいった。

終わって、映画館を出ると彼の歩き方がおかしい。ズボンのポケットに手をつっこんで片

足をちょっとひきずるように歩くのだ。

私はハハンとすぐわかった。すっかり裕次郎になりきっているのだ。

♪おいらはドラマー、やくざなドラマー 歌いながらドラムを叩く裕ちゃんはカッコイイ。

誰だって嵐を呼ぶヒーローになりたい。

まさに裕次郎は夢であり、青春なのだ。

私のボーイフレンドは裕次郎とは似ても似つかない子分肌でまめまめしく、心優しく、ア

ルバイト先で失敗したりするとすぐしょぼんとするのだった。

裕次郎ファンの彼は洋服にもこだわった。

「俺さあ、顔までとはいわないからさ、せめて脚が裕次郎くらいあればなあ。俺がアロハ

を着るとさ、おふくろがまるで猿回しの猿だっていうんだよね」

と言って周りを笑わせていた。

そんな彼も今は立派な実業家。お腹も出てるし、髪も薄い。それでも同窓会の二次会のカ

ラオケで♪夜霧よ〜今夜も〜ありが〜とう〜 と歌っているときはやはり裕ちゃんになり

きっているんだろうなあ。


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