●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、今回は辛抱と社会意識の兼ね合いに悩んでます。
耐える小説
夫が芥川賞受賞作が掲載されているからといって「文藝春秋」を買ってきた。
夫が読み終わったあと、私も受賞作「ポトスライムの舟」を読んでみた。つつましく
生きるワーキングプアの女主人公の生活実感がにじみでたなかなかの作品だと思った。
そして先日、私の購読する同人誌の春号も送られてきた。巻頭作品は(同人誌の巻頭
作品は掲載作の中でもっとも優れた作品とされている)やはり母親の介護と仕事を両
立させるべく四苦八苦する新聞配達員の独身男性の日常を綴ったものである。
両方の作品に共通するのは、今の時代を反映させているかのように、働いても働いて
も最低の生活しかできない惨めさを描いているところ。そしてそんな生き方を強いる
社会に何の疑問ももたずに受け入れて健気に生きているところである。
すぐ他人のせいにする私は見習わなければならない。
自己犠牲の精神を見習わなければいけない。
極限まで耐える強さをもたなければならない。
私は二つの小説からわが身の至らなさをおおいに反省したのだった。
すっかり反省ザルと化した私だが、だが、まてよ、そんなに内向しちゃっていいの?
健気に耐えるだけでよいの? そんな疑問が湧いた。
こんな生き方しかできない社会は間違っているのではないだろうか?
社会を変えよう、そんな視点も大事なのではないだろうか? まして、小説の役割を
考えるならば…。