サニーイズム 文はさぬがゆたか
ソノ世界的イラストレータ・サニーはココアメンバーですが、
ふだんのアート作業を栃木でやっていて、そこからの田舎だより。
お待たせいたしました、サニー時間掲載シリーズ到着。
「 ゼッケンの記憶 」
あらたまって何も出来ず過ぎていくようで焦っていたからなのかとりあえず大掃除
を始めてみた。今年こそはとまた自称「開かずの間」にとりかかってみる。わずか
八畳のその部屋は捨てずに捨てられず整理しようにも整理出来ずの昭和の部屋であ
り自分のだらしなさの空間。引越しのままダンボール箱に詰められた本の山や、ソ
ノシート盤を含むあの頃のレコードもあふれている。
どうしてこうも捨てられない性分なんだろといつも自問自答しつつそのつどなんら
かの宝を発見している。
で、今回の発見は30年も前のスキーの大会のゼッケンだ。
そのひとつ、雑誌の取材で滞在したカナダでのスキーレーシングに参加しちゃった
もの。正確にはドメスティックな飛行機会社とワイン会社がサポートするレースの
一環で、賞金の掛かったきちんとしたプロレースだったわけで、鼻息の荒い前夜祭
の勢いのまま当日を迎えたゼッケン。
ちょっとずるい取材まがいのエントリーではあったけど、きちんと費用も払い当日
を迎えたわけでありました。
今期冬のオリンピックの開催されるバンクーバーからは随分と東に入ったアルバー
タ州近くのスキー場であり、その日は朝からローカルTV局やら各種スポーツメー
カーのサービス車でに賑わっていた記憶がある。
だけれども、それは別な大会だと思っていた自分はお気軽で日本から持ち込んだへ
なちょこスキー板にあっさりとワックスを塗り集合場所で挨拶を待っていた。
そこはちょっとした体育館のようなところ。先に着いた自分はなんとなくなんとな
く一服、たばこの煙をゆるり〜とする日本人。
出場費100$近くを払い、負ければ賞金はナシ勝ち続けて得るサーキットスラロ
ーム・レースの現場で、最前列でぽか〜んと一服する日本人。
その会場の後にゃ100人を越える賞金稼ぎのレーサーがいるというのにその中で
ただ一服していたのは自分だけ。
「凄いのか ただアレなのか・・・・」
その頃にはまだ特別禁煙されていたわけじゃなかったけど、アスリートのはしりと
して思えばほぼ漫画的であり、日本酒をバッとバットに吹きつけボックスに向かう
アブさんのようでもあったのか?
結果。数百メートルの急斜面に2メートル近いジャンプ台が二箇所備わったバーン
をスラロームしタイムを競うレースは、あっというまに過ぎ去った。
その様子が地元夕方のローカルTV局にゃ流れたとのこと、一体どんなだったか想
像するにもうしろめたい。
百数十人が集まる大会の朝のミーティング。その最前列でプカ〜ッと一服していた
日本人はたぶん後にも先にも自分だけじゃないかと思う話。
本気で申し訳ない。
その夜に行われたパーティーで書き込まれた選手達のサイン入りの
ゼッケンがなんとも嬉し悲しいんです。