ぼけのたわごと 文と写真は上一朝(しゃんかずとも)
大変お待たせいたしました。
大好評だった酩酊放談のシャンせんせい、装い新たに復活しました。
今回のシャンさん、紅葉眺めて妄想しております。
紅葉狩
「形見とて 何かのこさむ 春は花 夏ほととぎす 秋はもみじ葉」と良寛は読んだ。
道元は「秋は月」としたが良寛との心持の違いだろうか。
この、春の花は桜をさすのだろう。そして桜といえば酒が浮かぶ。ところが紅葉とい
うと酒よりも温泉がつきもののようだ。急に寒くなったので、山峡の紅葉と温泉の名
所はさぞ老老男女でごったがえしていることだろう。
紅葉狩りの狩りは、紅葉を矢や鉄砲で撃つのではなく、草花を眺めることをいい、転
じて紅葉をめでることを紅葉狩りと言う。平安時代の風流であった。ところが現世の
暇人は、良寛さんの思いやりにあまえて風流、風雅もかまいなく、そこに紅葉がある
からと、ただ物見遊山にお出かけになる。
拙宅のすぐ隣にR大学の庭がある。ここは大学構内にありながら学生があまり来ない
ところだ。庭園はこのあたりの自然をよく残していて、見事な楓の古木がある。
大学の構内であるから平維茂を気取ってこの古木の下に毛氈を敷き風流をきめこむわ
けにはいかないが、無粋な雑踏に囲まれて紅葉見物をするよりいいものだ。しかし、
あまりの静けさに退屈をしてしまう。たとえ、あとで鬼になろうともここに更科姫が
あらわれて舞を舞い、お酌のひとつもしてくれたらどんなに良いことかと思ってしま
うのは俗人の悲しさである