12/29のしゅちょう             文は田島薫

(えらい人々について)

不況の中、ほとんどの金持ちも以前よりは貧しくなってるのかも知れないんだけど、

それでも、高級ブランドの店は繁盛し、高級車に乗ったり、豪邸に住んだりしてる

成功者はいるわけで、そういう人々に、貧乏人は憧れやある種の敬意を感じるにし

ても、自分にとってなにか恩恵を与えてくれてるのでない限り、そのことだけで心

から尊敬したりはしないし、よく考えてみたら、そういった贅沢なだけの暮らしし

てる当人にも本当の喜び、ってものがあるんだろうか、って疑問もわく。

それに比べ、どんな仕事でも、人の役に立ってて、それのおかげで助けられてる人

が沢山いるようなことをしてる人にはだれでも、心からの尊敬を感じるもんだろう。

それが、マリー・テレサとか、山本周五郎の書いた赤ひげのように、自分の生活さ

え質素にしたまま人に尽くす人ならなおさらだろう。


不当に解雇され、路頭に迷う非正規雇用の労働者たちに相談窓口を作ったNPOや、

自分の収入にもならないだろうに、住む場所もなくなった労働者に宿舎や生活保護

申請の世話をする弁護士たち、賞味期限の食品を集めたりしてはホームレスの人た

ちに炊き出しをするボランティアの人たち。


以前、新聞のコラムで、ホームレスの救済のボランティアをしてる男が紹介されて

たんだけど、年は60後半で独身、自分のささやかな収入のほとんどをそれに投入し、

自分は2畳ぐらいしかない部屋で積み上げられた本なんかに囲まれて寝泊まりして

るんだけど、彼の傲慢ではない静かな誇りと喜びをにじませた笑顔がよかった。

本当に尊敬すべきえらい人って、こういう人のことを言うんだなあと、しみじみと

感じたのだった。

本当の幸せな生活、ってものを考えた時にも、こういう例は参考になりそうだ。




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